C'est une vie merveilleuse

          −素晴らしき哉、人生−








人生って、なんだろうな・・・。




人生は、旅に似ている、と誰かが言った。

人生は、終着駅のない旅と同じ、と誰かが言った。

なら、香藤という終着駅にいる俺の人生って、どうなんだ?



「ねえ、岩城さん、」



もしも、なんて言葉は、考えても意味のないことだが。

もしも、香藤に出会わなければ。

出会っていても、

もしも、あの時、香藤が無茶をしてこなかったら。

そう考えた時、今の俺達はいない。

すぐに答えが出る。



「ねえ、岩城さんてば?」



俺自身、今の俺ではなかっただろうし。

なら、どんな風だったか、と聞かれてもわからない。

想像したこともない。



「ねえ、岩城さん?」

「・・・えっ?」

「なんか、考え事してたでしょ?」

「あ、すまん、呼んでたか?」

「うん。」

笑って俺の隣に座る、香藤。

まるっきり聞こえてなかったな。

「すまない、ちょっとな。」

「なに考えてたの?眉、顰めてたけど?」

「いや、人生は終着駅のない旅だって、例えがあるだろ?」

「うん、それが?」

「俺はどうなんだと思ったんだが。」

「なんでさ?」

「なんでって、お前のいるところが、その、」

「ああ、」

顔じゅう、笑顔にして香藤が頷いた。

「俺が終着駅ってこと?」

「うん。」

くすくすと笑い出す香藤。

「岩城さんの場合、出発駅と終着駅が同じだった、ってことだよね。」

「なんだ、それは?」

「だって、」

のばされた腕の中に囲い込まれて、香藤の顔を見上げた。

「俺が岩城さんの初恋で、最後の相手だもん。」

「だもん・・・って。」

久しぶりに見た、香藤の悪戯そうな顔。

「いいじゃん、俺と二人で人生の終着駅って奴を目指すんだからさ。」

「・・・ああ、そうか。」

「でしょ?」

そうだな。

なんだ、簡単な事だった。

「そういうこと。」






香藤の、笑顔。

一点の曇りもないその笑顔に、なんど助けられただろう。

苦労とか、悩みとか、人並み以上に経験して来たはずなのに。

どんなことがあっても、

香藤の笑顔は、くすむことも、歪むこともなかった。

思うように行かない事を、誰かのせいにしたり、

なんで俺だけが、なんて、香藤は考えない。

俺と違って、香藤は。



「ちょっと、岩城さん。」

「え・・・?」

「なんか、また余計なこと、考えてるみたいだけど?」

「うん、まぁ、昔のことを、ちょっと。」

「昔のことね。」



にっこりと笑う香藤の、その顔を見ていると、

今更ぐじぐじするのは、馬鹿らしいと思える。



「疲れてるんじゃないの?振り返る時って、そういうもんだって。」

「そうなのかな。」



・・・そう答えてから、気がついたが。



「誰のせいで疲れてると思ってるんだ?」

「あれ?俺だっけ?」



本気で首傾げてる。

まったく・・・。



「しょうがないでしょ、岩城さんが好きなんだから。」

「・・・ファンが見たら、泣くぞ、そのだれきった顔。」

「大丈夫、見せないから!」



そういう問題なのか・・・?



「それよりさ、俺の誕生日なんだし?」

「なんだ、その、なんだしってのは?」

「休み取ってくれたんだから、お礼をね。」



何がお礼なんだか、横抱きで立ち上がった。

わかりやす過ぎだろ。



「疲れてるんだがな?」

「ちょっとだけ。」

「お前にちょっとって言われても、信じられん。」



大声上げて、楽しそうに笑って。

悩んでたのが、どこかへ吹っ飛んだ。

そう香藤が仕向けた気もするが。



・・・まぁ、いいか。







     終




   2008年5月31日
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香藤君、お誕生日おめでとうv

やんちゃだった香藤君も、
すっかり今は頼もしい大人の漢(あえて、この字を当てたいv)に、
なりました。

完璧な恋人&旦那だよねぇ、香藤君て。
岩城さんの、ちょっとした顔色を見ただけで、
岩城さんのこと判っちゃうんだよね。
岩城さんは、幸せだなvv
これからも、岩城さんを幸せにして上げてください、香藤君!