悩める香藤箸





岩城さんの、綺麗な手が、俺たちを一本一本、丁寧に洗う。




香藤箸 「今日は、よく働いたね、俺たち。」

岩城箸 「そうだな。」

香藤箸 「朝と、昼と、夜と。ちゃんと3回。」

岩城箸 「珍しいな、こんな日は。

      大抵、2度あればいいほうだろ。」

香藤箸 「今日はオフだったからね。

      香藤君は、岩城さんのために、一生懸命、料理してるから。」

岩城箸 「ああ、微笑ましいな。」




岩城さんの機嫌が、とってもいい。

鼻唄なんか、歌ってる。

自分と、香藤君用のお箸。

つまり、俺たちを優しく、大事に洗ってくれる。




香藤箸 「ちゃんと、お仕事が出来ると、嬉しいね。」

岩城箸 「そうだな。」

香藤箸 「気持ちいいねぇ、仕事した後、さっぱりするのって。」

岩城箸 「岩城さんが、きちんと洗ってくれるからな。」

香藤箸 「でもさ・・・」

岩城箸 「・・・なんだ?」

香藤箸 「最後に、擦り合わせるの、やめて欲しいんだよね。」

岩城箸 「・・・は?・・・」

香藤箸 「だって・・・感じちゃうんだもん。」

岩城箸 「・・・・・・・。」

香藤箸 「しかも、岩城箸さんと一緒にだよ?困っちゃう。」

岩城箸 「・・・お前、持ち主に似たな・・・。」



       
    終わり




     弓




   2005年6月18日
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