オフ







何の変哲もない、日常。

特に何かするわけでもない、時間。

一言も、話しをしなくても。

それでも、どこかが繋がってる。

今、俺の頭の下にある、腿。

変な力の入ってない、程よい弾力。

リラックスしてるのが、わかる。

その顔は、俺の目からは本で隠れて見えないけど、

きっと、穏やかな顔をしているはず。

髪を弄られるの、凄く気持ちが良くて。

だんだん眠くなってくる・・・・・






たまの休み。

普段、仕事に追われている分、

この平凡な一日が、とても貴重に思える。

お前の顔は、本に隠れて見えないけれど、

聞こえてくる、穏やかな寝息が、

俺の心を満たしてくれる。

・・・俺の膝で、安心しきって眠る、お前。

膝に感じる、この重み。

俺にとっては、なくてはならないもの。

それが、とても幸せだ。

本を脇へ置いて、お前の顔を眺める。

それも、俺にとってはほっとする時。






でも・・・

・・・起きろ、香藤。

キスしたいんだから・・・






ゆっくりと、目を開けた。

目の前に、岩城さんの顔があった。

・・・優しい顔。

ずっと、微笑んで俺を見ててくれたの?

・・・やだな・・・

恥ずかしいじゃん。

でも、嬉しいよ。

「ねぇ、キスしていい?」

「馬鹿。」

あ、真っ赤になった。

「・・・いいよね?」

「いちいち聞くな、そんなこと。」

ちょっと、むくれてる。

ねぇ、ひょっとして、思ってた?

キス、したいって・・・

「そうでしょ、岩城さん?」

・・・可愛い・・・

当たってるんだ、俯いちゃったもんね。






・・・まったく・・・

いたずら小僧みたいな、香藤の顔。

俺の気持ちを、嫌になるくらい、言い当てる。

・・・でも・・・

だからこそ、俺はお前の前では、

素直でいられる。

だから、香藤・・・

・・・馬鹿言ってないで






「・・・おいで、岩城さん・・・。」

「・・・ああ・・・」

そう、その言葉を待ってたんだ・・・。

重なってくるお前が、愛しい・・・。










        〜終〜




      2005年8月26日
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