この小説は、遊楽第のユウ様が描かれたイラストと、短編を基にして、書いたものです。



     横顔






「・・・ほんとに、知らないよ・・・。」

「・・・かまわない、と言ってる・・・。」

上目遣いに見つめる、岩城の顔。

どことなく、頼りなげなその表情。

堪らなく、香藤の欲情を煽る。

ぐい、と岩城の腕を引き、身体の下に組み敷いた。

それだけで岩城の呼吸が早まり、熱い息で香藤を見上げた。

「・・・そんな顔しないでよ・・・。」

「・・・どんな顔だっていうんだ・・・?」

「・・・俺のことが、欲しいって、顔・・・。」

岩城の頬が薄く染まった。

香藤の腕の中で、彼の肩に顔を埋める。

その仕草に、堪らず伏せた顔を肩から引き剥がすと、

香藤はその唇に喰らいついた。

「・・・んっ・・・んぅっ・・・」

甘い、岩城の唇。

歯列をなぞると、上擦った息が漏れた。

・・・どうして、この人のこの声は、こんなに色っぽいのかな・・・

内心で感嘆しながら、香藤は思う存分岩城の唇や口腔内を犯した。

「・・・あはっ・・んっ・・・」

息苦しげに、眉を寄せて外れた唇の隙間で呼吸をする。

その顔さえ、香藤の茎を昂ぶらせるには、十分過ぎた。

抱きしめる身体の間で、岩城の茎が脈打つ。

熱い呼吸で、岩城は香藤を見上げた。

『・・・か、と、う、・・・』

声には出さず、岩城が名を呼んだ。

ゾクッ、と身体に震えが走る。

「・・・もう・・・俺のこと、どれだけ煽れば気が済むの?」

岩城は、香藤の昂ぶった顔を両手で挟んで、

ぺろり、と唇を舐め上げた。

「・・・まったく・・・」

もう一度、奪い合うように口付けを交わし、香藤は身体を起こした。

ぐい、と岩城の両膝を掴んで、左右に開いた。

物欲しげに、引くつく蕾に、何の前戯もなく、いきなり舌を這わせる。

押さえられた内腿の震えが香藤の手に伝わる。

「・・・はっ・・・ぁんっ・・・」

侵入して来た舌に、シーツを握り締めた岩城の腰が跳ねた。

入り口だけを攻められるもどかしさに、切なげに眉を寄せる。

「・・・ぁうぅんっ・・・」

香藤の舌の動きに合わせて、岩城の腰が揺れた。

舐める隙間から、指を差し込み、壁を抉った。

「・・・はっ・・・あっんっ・・・」

腰を前後に揺すり、声を上げる岩城。

身体を起こして、香藤はその顔を覗き込んだ。

「・・・香藤・・・」

「どうして欲しい?」

指を動かしながら、意地悪げに聞いてくる香藤を、

岩城は軽く睨んだ。

濡れた唇。

潤んだ、染まった目元。

欲情に霞んだ瞳に、香藤は喉を鳴らした。

「ねぇ・・・岩城さん・・・。」

「・・・入れて・・・くれ・・・」

肩で息をし、岩城は喘ぎの合間に、潤んだ声で囁いた。

「・・・お前で・・・一杯になり・・・たい・・・」

カッ、と、身体が火照る。

香藤が、堪りかねて苦笑した。

「もう・・・そういうこと、言わないでよ・・・」

「・・・早く・・・」

「どうなっても知らないからね・・・」

「・・・いい・・・あっ、はぅんっ・・・」

指が引き抜かれた直後、燃え滾った塊が、一気に岩城を貫いた。

柔壁が引き摺られ、震える。

「・・・んあぁっ・・・」

その衝撃に、岩城の眉がきつく寄せられ、香藤の腕を掴んだ。

「・・・んっ・・・んっ・・・」

最奥まで収めて、香藤は岩城の唇を喰んだ。

岩城の熱い息が鼻から抜ける。

それは、香藤を熱くするばかりで。

動こうとした香藤の首に、岩城の腕が絡んだ。

「・・・待ってくれ・・・」

「・・・どしたの?」

「このまま、少しでいいから・・・」

「・・・ん?」

見つめる香藤が岩城の眦に浮かんだ涙に映る。

「・・・俺の中のお前を、確かめたいから・・・」

岩城のその言葉に、中にいる香藤が反応する。

「・・・ふっ・・・あっ・・・」

より、圧迫されて岩城の腰が浮いた。

「・・・そんなこと、言うからだよ。」

「・・・だって・・・」

「・・・いいけどさ・・・」

香藤は岩城の望みどおり、彼を抱きしめ頬をつけた。

その香藤の身体に、岩城の両腕と両脚が、縋りつく。

「・・・どう?」

「・・・ああ・・・感じる・・・」

「・・・そう?」

「・・・うん・・・幸せだ・・・」

甘い、岩城の香りが香藤の鼻腔をくすぐる。

心に、屈託のあるとき、岩城は常より香藤を求める。

今夜も、心を満たしたくて、確かめようとしている。

・・・なにか、あったよね、岩城さん・・・

・・・泣いた理由って・・・

・・・多分、それは・・・

二人の身体の間で、岩城の茎が張り詰めるのを、香藤は感じた。

「何もしてないのに、いきそうだね。」

「・・・馬鹿・・・」

腕の中で、満ち足りて微笑む岩城を見て、

香藤の茎がもう一段、熱を持った。

「・・・んっ・・・ぅっ・・・お・・・前・・・どこまで大きくする気だ・・・」

「・・・そんなこと言ったって・・・」

フッ、と岩城が笑った。

「ねぇ・・・俺・・・もう、我慢できない・・・」

ああ、と、溜息のように岩城が頷いた。

岩城の双丘を両手で掴み、香藤は自分を叩きつけるように、動いた。

「・・・やっ・・・あぁっ・・・」

「・・・くッ・・・岩城さっ・・・」

白く、長い岩城の両足が、香藤の腰を巻き込むように絡みつく。

「・・・んふっ・・・うんっ・・・」

仰け反ったまま、岩城は声を上げ続けた。

「・・・か・・香藤ッ・・・」

名を呼んで、腰を揺らす岩城に、香藤が囁いた。

「・・・もっと、欲しい?」

「・・・んっ・・・ぅんんっ・・・」

岩城が夢中で頷く。

クスッ、と笑って香藤は腰を引き、岩城の感じる場所を攻め上げた。

「・・・あっひぃぃっ・・・」

シーツを掴んでいた手が、香藤の背に縋りつく。

「・・・あッ・・・あぁっ・・・ふんぅっ・・・」

「・・・綺麗だ・・・岩城さん・・・」

「・・・んぁっ・・・はぅんッ・・・」

香藤の腹に、岩城が弾けるのがわかった。

甲高い声を上げて、岩城が余計に仰け反った。

「・・・あぁぁッ・・・かッ・・・かとぉッ・・・」

途端に、絞るように締め付けられて、

香藤も岩城の奥に自分を吐き出した。



「・・・哀しい涙は、止まった?」

香藤が、岩城の肩を抱いて、髪を撫でた。

「・・・ああ・・・。」

岩城は、溜息のように、小さな声で答えた。

「俺のことで、なんか言われたんでしょ?」

「・・・え・・・?」

驚いて顔を上げ、自分を見つめる岩城を、

香藤は笑って見返した。

「わかるよ、それくらい。

岩城さんは、自分のことをなにか言われても、

泣いたりなんかしないでしょ?」

「・・・香藤・・・。」

「気にしないの。言いたい奴には言わしておけばいい。」

「・・・でもな・・・。」

「いいんだよ、岩城さん。

俺のことは、誰より岩城さんがわかってくれてる。

それだけで、俺はいいんだ。」

天井を見上げ、香藤は淡々と続けた。

「誰にも、何も言わせないように、俺が頑張ればいいんだから。

今、何かを言われるってのは、俺が力不足だからだよ。

頑張りが足りないってことだね。」

唇を震わせて岩城は香藤の、引き締まった顔を黙って見つめた。

「それに、さ。」

「・・・それに・・・?」

「岩城さんが、俺のことで泣くのは、俺が辛いからさ。」

岩城が、上げていた顔を香藤の胸に伏せた。

それを、香藤は抱え直し、髪に鼻先をくっつけて囁いた。

「・・・だから、泣かないで。」

「・・・うん・・・。」

ふふ、と、香藤は笑った。

「また、泣いてる・・・。」

「・・・いいだろ、この涙は・・・。」

「うん、いいよ。幸せ涙なら、大歓迎だね。」

「・・・ばか・・・。」



穏やかな寝息を立てる岩城の横顔を、香藤はじっと見つめた。

「・・・ごめんね、心配かけて。俺・・・頑張るからさ。」




         〜終わり〜




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