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Hushabye




・・・ねえ、岩城さん。

俺、夜中に目が覚めたとき、

ずっと岩城さんの寝顔を眺めちゃうことが、よくあるんだ。

いつも、俺の腕の中で眠ってくれる。

今もそうなんだけど。

すごく可愛くて、すごく綺麗で、すごく色っぽくて。

なのに、子供みたいで。

岩城さんの寝顔を見てると、ほっとする。

俺にこんなに無防備な姿を見せてくれる。

それが、ほんとに嬉しい。

岩城さんの寝顔って、俺にいろんなものをくれるんだよ。

責任も感じるけどね・・・。



最初は、俺のこと嫌いだったでしょ。

初めて会ったとき、挨拶した俺を冷たい目で見てた。

年上だし、先輩だから言わなかったけど、

あの目はきつかったよ。

ムカついたんだよね。

でも、見てて思った。

俺だけにじゃない。

みんなを必要以上に寄せ付けない何かがあった。



・・・今は、わかってるけどね、それがなぜだったのか。



だから、TVの共演が決まって、

酔っ払った岩城さんに呼び出されたとき、

ものすごく、びっくりした。

いつもの岩城さんじゃなかったから。

俺に、顔色変えて突っ掛かってくることなんて、なかったじゃない?

無視することはあってもさ。

あの時の岩城さんは、少しつついただけで崩れそうな、

そんな危うさだった。

自分をおとしめるようなことを、言う人じゃないはずなのに。



その所為、かな。

なんか・・・可愛いなって思っちゃたんだよね。

それで、いらついてる事とか、

余計なことを考えないで仕事して欲しいなって、思って・・・。


・・・でも、抱きたいって思ったのは事実。

キスしただけで、舞い上がるなんて思わなかったけど・・・。


それまで男なんて抱いたことなかったし、考えてもいなかった。

仕事以外でも女と遊んでたし・・・。

なのに、岩城さんを抱いて、すごく感じちゃって。



あれから岩城さんのことが頭から離れなくなったんだ。

すごく純粋で、繊細で、真面目で、傷つきやすくて、優しい。

こんな人が、いるのかと思った。




岩城さんがどんどん変わっていくのが嬉しかった。

特に、俺の腕の中にいる岩城さんが。

最初の頃ぎこちなかったのが、日が経つにつれて、

俺に甘えてくれるようになって・・・。

今じゃあ、岩城さんの媚態に俺のほうが煽られてるよね。

色ッぽ過ぎるんだよ、岩城さんて・・・。




・・・俺たち、今まで色々あったね。

ほんのちょっとしたことで傷ついたり。

ほんのちょっとしたことが嬉しかったり。

そうやって、ここまで来たんだ。

俺、よく岩城さんのこと泣かせちゃったね。

俺も、泣いたけど。

でも、その分解かりあえて、深いところで繋がってる。

愛情も。

毎日、毎日、岩城さんを愛してるって、気付く。


なんでだろうね・・・。

今は、岩城さんと一緒にいることが当たり前になってる。

いて当たり前、というか、いないと変、ていうか。

二人で、一人なのかな・・・俺たち。





「・・・香藤・・・?」

「ん?起きちゃった?」

俺の胸に潜り込んでくれる。

・・・可愛い・・・。


「岩城さん、俺の胸で寝るの好き?」

「ああ・・・好きだ。」

「ほんと?」

「ああ・・・安心できる。」


そう言って頬染めてる・・・半分寝惚けてるけど。


「お前、寝ないのか?」

「もう、寝るよ。お休みのキスしたらね。」

「うん・・・。」


そっとキスをして離したら岩城さんは眠りの中だった。


・・・安心できる・・・


嬉しいよ、岩城さん。

ずっとそう言って貰えるように、俺、頑張るからさ。

・・・お休み。




                〜終〜

              2004年12月14日