S・U・N・Z・E・N







俺の上に、ゆっくりと腰を下ろしていく。

眉を寄せて、瞳が揺らぐ。

下ろしきって、天井を仰いで溜息をついた。

それから、俺を見下ろしながら、

まるで心臓をわしづかみにするような、

極上の微笑を浮かべて、俺に重なってくる。

肩脇に手をついて、俺に重なりながら、岩城さんは唇を寄せてきた。

肌を、ぴたりと押し付けて、唇が触れる寸前に、岩城さんが囁いた。

「・・・好きだ・・・」

もう・・・なんて顔するの・・・。



時々、岩城さんは無性に俺が欲しくなるときがあるみたいで。

そんなときは、必ず、中にいる俺を確かめるように、じっとしてる。

それ、俺にはきついんだけど。

でも。

俺の胸に倒れこんで、熱い息をしてる岩城さん。

時間たつにつれて、声が漏れ始める。

動いてないのに。

腰が、ちょっと、動き始める。

無意識?

いいんだけど。



「・・・んっ・・・」

・・・とろん、とした目で、顔をあげて俺を見る。

熱い息が、俺の顔にかかる。

「・・・動く?」

目が合った。

岩城さんは、また、微笑んだ。

「・・・もう、少し・・・」

「このままがいい?」

「・・・うん・・・」

鼻にかかった声で、頷いて岩城さんは俺の顎に、唇を触れた。



「・・・香藤・・・」

岩城さんが、息も絶え絶えに、俺の耳元で囁いた。

「・・・んっ・・・」

ゆっくり起き上がって、俺の二の腕を掴んだ。

ずりって、身体を揺すって、腰を引いた。

「・・・あんぅっ・・・」

自分から動き始めた岩城さん。

見上げる俺。

「・・・はんぁっ・・・」

顔を左右に振って、喘ぐ。

なんで、こんなに色っぽいんだろう・・・。



「・・・もう・・・」

快感に顔をゆがめて、俺を見下ろした。

「・・・動けない?」

「・・・ん・・・」

岩城さんを抱き寄せて、唇を塞いだ。

俺の舌に、岩城さんが舌を差し出してくれる。

・・・もう・・・。

夢中で、吸い付いちゃう。

俺の身体にまとわりつく、岩城さんの腕。



「・・・香藤ッ・・・香藤ォ・・・」

「・・・んあっ・・ひ・・いぃ・・・」

身体、捩って、喘いで。

岩城さんの声が、俺の癒し。



・・・確かに、俺が挿れてるのに。

抱いているのは、俺なのに。

抱かれてるような気がする。

時々、思う。

ブレーキ、利かなくなって、無茶してる時だって。

抱いてても、抱かれてる。

夢中で、声上げて俺にすがり付いてても、

俺は岩城さんに包まれてる。

俺の全部を受け入れて。

俺の全部を受け止めて。



・・・いつだって・・・



岩城さんは、どう感じてるんだろ。



「・・・ねえ・・・」

「・・・ん?」

べっとりと、前髪を張り付かせた顔。

まだ、荒い息。

・・・俺、挿いりっ放しだもんね。

「・・・俺、抱いてもらってるみたい。」

「・・・は?」

岩城さんは、不思議そうに俺を見つめた。

でも、わかったみたい。

「・・・幸せだ。」

・・・いい顔。

「お前にそう感じてもらえるのは。」

・・・なんてこというの・・・。

ほんと、堪んないね。

「・・・大好き・・・。」







また、岩城さんが微笑んで、ゆっくり、唇を寄せた・・・。





          〜終〜






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