Sweet Nothings






岩城さん、

肩出してたら、寒いでしょ?

もっと、こっちおいで。




・・・ねぇ、岩城さん、俺、今日で31になったよ。

うん、早いねぇ。

岩城さんと出会って、9年だね。

もう、9年?

ううん、たったの9年だよ。

俺にとってはね。




岩城さん、

前にさ、

俺にもっと早く出会いたかったって言ってたけど、

それ、凄く難しいよね。




俺と岩城さんが最初に会ったとき、

俺、二十歳そこそこだったじゃん?

岩城さんは、もう、その時はバリバリに仕事しててさ。

俺なんか、ガキだったよね。

今でも、あんまり変わってないけどさ。

え?そんなことないって?

ほんと、そう思う?

嬉しいよ。

岩城さんは変わったよね。

あ、自覚あるんだ。

そうだよね。




あの頃、俺は岩城さんのこと、なんにも知らなかったし。

岩城さんも、俺のこと、相手にしてくれなかったしさ。

ああ、違うって。

悪い意味じゃなくてさ。

ほんと、俺、子供だったもん。

岩城さんのこと、自分勝手に思い込んでたし。




あれが、テレビドラマにならなかったら、

今の俺達って、ないんだよね。

・・・どうしてただろうね、俺達、今頃。

俺は、あのままAVやってたとは、思えないんだよね。

岩城さんもじゃない?

・・・いや、年がどうとかじゃなくてさ。

岩城さんも、俺も、

今みたいに、じゃなくてもさ、

話とかしないままだったり、

あのまんま仲悪くて、

こういう風にはなってなかったよね、きっと。




いま思うと、だけど。

あの時、ちょっと迷ったんだけどさ。

岩城さんのマンションに、行ってよかったって思うんだ。

この幸せ全部、あの時、

岩城さんが俺を呼んでくれたからあるんだもん。

・・・え?酔っ払った勢いだったって?

いいんじゃない?

だから、今があるんだもん。

すっごい幸せじゃない?




岩城さんと愛し合わなかったら、

俺の9年間、

きっと、ろくなもんじゃなかったと思うよ。

この幸せは、なかったね。

岩城さんも?

・・・ありがと。

ううん。

ほんとに、俺のこと愛してくれて、ありがとう。

これから先も、ずっと、岩城さんが俺を愛してくれるって、

それ、俺にとっちゃ、何よりも幸せなことなんだよ?

だから、俺はそれ以上に、岩城さんを愛して、大事にする。

うん、誓うよ?

なにに誓おうか?

そうだね。

じゃ、岩城さんの、俺への愛情に誓おうか?




いいじゃない、俺の誕生日だけど、

俺は岩城さんに出会えたことのほうが、嬉しいんだから。

だから、岩城さんも、嬉しいって思ってくれればいいんだよ。




うん。

ありがとね。

今日はさ、一日中、甘やかしてよ。

え・・・?

・・・は〜い・・・できるだけ、加減します・・・。







      弓



   2006年5月14日
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