言霊の幸ふ






岩城さんの言葉は、重い。

それは、口に出して言う言葉だけじゃなくて。

ちょっとした仕草とか、

表情とかから伝わってくるものとか。

俺を見つめる瞳とか。

俺の腕の中にいて、熱い息を吐いているときも。

俺の背を這う手とか。

俺の腰を挟みつける脚とか。

全身から、伝わってくるすべてが。






香藤の言葉は、深い。

普段は、寝てるんだか起きてるんだか、

疑うくらいにおちゃらけたりするのに。

俺が落ち込んだり、考え込んだりする度に。

香藤は俺の悩みなど、あっさりと吹き飛ばす。

それは、口に出す言葉だけではなくて。

黙って引き寄せる腕とか。

俺の背中を撫でる手、とか。

キスからさえ伝わってくる。






岩城さんの言葉は、重いだけじゃない。

いつも俺の心臓を鷲掴みにする。

本人は、まったく自覚なしに。

それは、俺を心配する言葉だったり。

俺を有頂天にさせる言葉だったり。

時には、俺を煽る言葉だったり。

その言葉は、岩城さんの本心。

嘘や、お世辞が言えない人。

だからこそ、余計にずしりと心に来る。






香藤の言葉は深くて、温かい。

いつも、俺を包み込む。

時には、やきもちを焼いて剥れたりするけれど。

それも俺を大事に思ってくれているから。

それはいつも呆れるくらいに真っ直ぐで。

香藤は何につけても、誤魔化したりはしない。

例えそれが、俺を叱る言葉であっても。

香藤は、きちんと俺に伝えてくれる。

だからこそ、心に響く。






岩城さんの涙は、切ない。

時にそれは、言葉よりも雄弁で。

俺の心に迫ってくる。

強い人だからこそ。

いつも、泣かせるのは、俺。

申し訳なくて、俺も泣きそうになるけど。

でも。

その涙を、綺麗だと思う。

俺の腕の中で流す涙さえ。






香藤の涙は、辛い。

滅多に、泣くことはないけれど。

それでも、時に流す香藤の涙。

人前では消して、見せない。

それを、俺の前では隠すことなく。

心を許している証ではあるけれど。

それでも、俺の心まで遣る瀬無くなる。






心から、言葉を紡ごう。

誰よりも、大事な人だから。

岩城さんが俺にくれる言葉と同じくらいに。

俺も、大事に言葉で伝えたい。






照れずに、言葉で伝えよう。

誰よりも、大切な男だから。

香藤が俺に渡してくれる言葉と同じように。

俺も、心からの言葉を紡ぎたい。






岩城さんが、大好き。






香藤を、愛してる。








 〜終〜




 弓




  2005年11月28日
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