「ある小春日和」



「岩城さん、花見に行こうよ」

岩城が仕事から戻ってきた、夕刻‥‥‥香藤に迎えられたリビングで言われた。

明日は二人ともオフだが、もう桜には遅い季節だった。

「花見って‥‥‥香藤」

岩城はソファーに座りながら聞き返す。

嬉しそうの目をキラキラさせる香藤の笑顔は岩城の心を安心させるものでもあった。

「ダメ?」

無言で顔を見つめている岩城に、香藤は心配そうに聞き返す。

「いや‥‥‥桜は済んでいるから‥‥‥何の華かなってね。香藤、何を見つけた?」

岩城は香藤の目を覗いて聞き返すと、香藤の瞳は更に増す様だった。

「ひ・み・つ」

嬉しそうに言い返すと、香藤は岩城の唇にキスを落とした。

「明日‥‥‥何時だ?」

キスを離した後、岩城は少し頬を朱に染めて聞き返す。

「少し早いけど‥‥‥朝から行きたい‥‥‥」

香藤はオズオズと聞き返す。

「じゃあ、今日は早く寝ないとな‥‥‥いいな、香藤」

岩城は明日の事を思って釘を刺す。

「ええ‥‥‥そんな‥‥‥」

香藤の顔が見る見る間に泣き顔となる、

『まったく、自分から提案したんだから‥‥‥少しは納得しろって言いたいが‥‥‥

この顔に弱い俺もダメだな‥‥‥』

苦笑しながら、岩城は香藤の顔を引き寄せると、唇にキスを落とす。

「い‥‥‥わき‥さ‥‥‥ん」

香藤は驚きつつもその唇を味わった。

お互いの唇をついばむキスから、少し深いキスに‥‥‥歯列をなぞる岩城の舌に

呼応して、香藤の舌が岩城の舌を捕らえる。

お互いに認め合い、舌を絡めあうと微かに『クチュ』っと音がする。

香藤の舌が更に深く捕らえようとすると、岩城の舌は逃げる。

繰り返し、繰り返し‥‥‥

しばらくして岩城は香藤の唇を離すと、余韻に浸ったように香藤の腕に抱きしめられる。

鼓動が‥‥‥心なしか早い‥‥‥

体温が‥‥‥少し高い‥‥‥

「香藤‥‥‥これで我慢してくれるか?」

息が弾むのを押さえつつ、岩城は聞き返すと、香藤は嬉しそうに微笑む。

「そうだね‥‥‥明日、楽しみにしててね。すごい穴場見つけたんだよ」

岩城からのキスが嬉しくて、香藤は言い返した。

「ああ、楽しみにしている」

岩城は言い返すと、再び香藤の体温を楽しむように体を預けた。

「‥‥‥ねぇ‥‥‥我慢できない‥‥‥ダメ?」

香藤は小さな声で岩城の耳元に聞き返す。

「クスッ‥‥‥ああ、俺もだ‥‥‥でも、明日も楽しみにしているから‥‥‥程々にな」

岩城も香藤の耳元に答える。

「岩城さん‥‥‥愛してる」

香藤は岩城をそのままソファーに優しく押し倒したのだった。





次の日‥‥‥

岩城が目を覚ますと、隣の場所はもぬけの殻になっていた。

階下で物音がするところを見ると、先に起きて何かをしているようだった。

時計を見ると朝の5時半‥‥‥休みなのに我ながら早く起きたものだと自分で感心を

すると、ベットから抜け出した。

ドアを開けると良い匂いがする。

「香藤‥‥‥」

台所で料理をしている香藤に、岩城が声を掛けると‥‥‥机の上に三段重箱にお弁当

が作られている所だった。

「あ、岩城さん。おっはー」

香藤が上機嫌で言い返すと、出来上がった厚焼き玉子を皿の上に乗せた。

「すごい量だな‥‥‥」

岩城は驚き聞き返すと、苦笑して珈琲を入れ始める。

こんな時には言うだけ無駄な事だと解かっていたし、量からしても何かを考えての事だと

思っていたらしい。

「へへっ‥‥‥向うに行ってのお楽しみってね」

香藤はそう言い返すと、中華なべで何かを炒め始めたのだった。



行先は香藤が知っているので、運転も任せた。

岩城は助手席に座り車窓の景色を楽しむふりをして、香藤の様子を眺めている。

車のCDから流れる曲にあわせ、鼻歌を歌いながらハンドルを回す。

視線はまっすぐ前を見つけている‥‥‥

『‥‥‥香藤』

声を出さずに名前を呼び、窓の外に視線を投げる。

若木が萌え始め、日差しが心なしか温かく感じる。

車は一路、千葉に向かって進んでいった。



車が止ると、香藤は横を見ると、岩城は微かな寝息を立てていた。

「岩城さん‥‥‥着いたよ」

耳元で囁き、そのまま誘われるようにキスを落とす。

「ウッ‥‥‥ンン‥‥‥か‥とぅ」

キスに誘発されて、岩城はその瞼を開き、まだ寝ぼけた目で香藤の顔を見つめる。

「着いたよ‥‥‥降りよう」

香藤は、名残惜しそうに岩城を離し、車を降りると助手席のドアを開ける。

「ああ、寝ていたか‥‥‥香藤すまない」

岩城は目を擦りながら、外に出ると香藤が待っている横に並んだ。

「重くないか?」

弁当の入った風呂敷をもっている香藤に聞き返すと、

「全然。じゃあ、行こう。こっちだよ」

岩城の手を取ると、先に進んでいく香藤に、岩城は苦笑して後を着いて行った。

少し歩くと、目の前に薄紫の物が飛び込んできた。

「香藤‥‥‥」

岩城は目の前に広がる光景に驚いた。

「綺麗でしょう。洋子に教えてもらったんだ。で、ここで待ち合わせ」

香藤は楽しそうに言い返し、レジャーシートをその下に敷いた。

藤棚‥‥‥満開の藤の花‥‥‥

岩城は見入ったまま、その場を動けない‥‥‥

「香藤、こんな綺麗な所‥‥‥あったんだな。ありがとう」

岩城は言い返し、香藤の横に座った。

「岩城さん‥‥‥綺麗だね」

香藤は岩城を見つめて言い返す。

岩城の頬が少し赤く染まるのを見て、キスをする。

向うで洋介の声がする‥‥‥

二人の唇は名残惜しそうに離れると、微かな風が吹き藤の花を巻き上げる。

春の日差しが温かく‥‥‥そして穏やかに流れた。





                      ―――――了―――――



                              2005・4  sasa
戻る sasa様、ありがとうございます!
可愛いよぉvvv、岩城さん!!

岩城さんからの、キスvvv
羨ましい(爆)
香藤君の岩城さんへの心遣い。
いい旦那だvv 
藤の花のしたの、岩城さん、さぞや、
綺麗だったでしょうねぇ!!       
助手席で寝ちゃった岩城さんも、
可愛いったら、ありゃしない!
私だったら、そのまま襲う(爆)

ムフフ・・・隠し部屋連動ですvv

ほんとに、嬉しいですvv
大切にしますね!