Unwrapping the Love









・・・あのバカ、また、風呂上りに裸で歩きまわってる。

いつまでも子供じゃないんだから、

いい加減にしろと何度言っても聞かない。


「おい、香藤、なにか着ろ。」

「えー?」

「裸のまま歩くなって言っただろ。」

「なんで?」


毎回、これだ。

頭にタオル巻いて、素裸で、冷蔵庫開けて。

タオル巻く場所、間違ってるだろ。


「なーに、岩城さん、スケベ。」

「なにがだ?!」

「だって、俺の身体じろじろ見ちゃって。

あ、心配しなくていいよ。

これは、岩城さんのだから。それとも欲しい?」

「お前、脳みそどっかに置いてきただろ。」

「あははー、そうかも!」


・・・確かに、見事な身体だとは思うが。

とんでもない、筋肉もりもりの身体になってる。

いつの間に、と思う。

いつ気付いたんだか、もう忘れたが。

抱き込まれて身動き取れなくなって・・・。

と、いうか、らくらくと横抱きされたときか・・・。


「あのさー、」

「・・・え?」

「いいんだけどね。

俺の身体、岩城さんのだから。

でもさー、なんか、身体中に視線感じちゃって、

違うとこも感じちゃうから、勘弁して?」


・・・こいつの性欲は、どうなってんだ。


「そういう目で見てない。」

「えー?なんで?」

「なんでって、」

「つまんない。押し倒そうと思ったのに。」

「あとでだ。せっかくの誕生日に、夕飯が先だ。」

「あれ?せっかくの誕生日だから、愛し合うんじゃないの?」


・・・まったく、いくつになっても、こいつのこういうところは変わらない。

というか、いい加減にしろ。


「・・・なにしてる?」

「え?乗っかろうかと。」

「だから、」


無言で、圧し掛かって来るな。

重い。


「服を着ろ。」

「ちぇー。」


・・・太い首。

肩も、すごい筋肉だな。

二の腕なんて、両手でないと掴めない。

胸の厚みは、半端じゃないし。

腹は、割れてるし。


「あの、ね、岩城さん。」


太腿なんて、俺のウエスト、とは言わないが・・・。


「ねー、岩城さん?」

「・・・え?」

「止めろとか言っといて、それはないよね。」

「それ?」

「俺の身体、そんなに触りごごち、いい?」

「・・・触ってたか、俺?」

「なにー?!無意識?!」

「あ、いや・・・。」


・・・なんだか、拙い目つきだ。


「スイッチ、入っちゃったんだけど、どうしてくれんの?」

「入れた覚えはないぞ。」

「もー、責任取ってよね。」


困ったな。

腹が減ってるんだが。


「後にしないか?」

「なんでー?」

「お前の作った飯、食いたいんだ。」

「えー、どうしようかな。」

「な、香藤・・・。」


・・・喋ってる途中で、キスはやめろ。

あちこち、触るのも止めてくれ。

そう言えば、こいつ、背骨が埋まるくらい、

背中も筋肉だらけだった。


「・・・岩城さんさー、今日、どうしたの?」

「何が?」

「俺の身体触りまくってるけど?」

「いけないのか?」

「いけないってわけじゃないけど、」

「・・・これは、俺のだろう。

どう触ろうが、俺の勝手なはずだな?」


・・・なんだ、その蕩けた顔は。


「うふふー。」

「・・・気持ちの悪い笑い方、するな。」

「岩城さんの身体は、俺のだよね。」

「お前ほど、綺麗じゃないがな。」

「はああ?!なに言っちゃってんのー?!」

「まぁ、弛んでないくらいが取り得だが。」

「・・・それ、マジで言ってる?」

「なにがだ?」

「マジで言ってるよね、岩城さんは。まったくもー。」


自分で言って、自分で納得するのはやめろ。

あいもかわらず、わからん奴。


「お腹空いてるんだ、岩城さん。」

「ああ。」

「そっか。じゃ、ご飯にしよ。」

「最初からそう言ってる。」


なんだ、その呆れた顔は。

あからさまに話題変えただろ、お前。







・・・結局、こうなるのか。


「服、脱いだよ、岩城さん。」

「だから、なんだ?」

「思う存分、触っていいよー。」

「なに言ってんだ、馬鹿。」

「えー、触りたくないの?」

「そういう意味じゃない。」


触れったって、身動き取れないだろう。


「触って欲しいんなら、この腕なんとかしろ。」

「なんで?」

「お前、自分がどういう身体してるのか、知ってるか?」

「あれ?動けない?ちょっと抱き締めてるだけなのになー。」

「お前のちょっとは、ちょっとじゃない。」

「はーい。」


・・・俺に、体重をかけないように抱いているのがわかる。

身体の間にできた隙間を覗いた。

なんだろうな、この逆三角形は。

下に見える俺の身体が、細く見える。


「ねぇ、俺ってかっこいい?」

「ああ、そうだな。」

「なんで笑うのさ?」

「いけないか?」

「いいけど。」


自分も笑ってるくせに。

格好いいものを、格好悪いとは言えないだろう。

今日で香藤は、三十四になった。

かつては、悔しいと思ったこともあるほど、いい男になった。

まっすぐで、揺るがない愛情を、あのときから変らずに、俺にくれる。


「・・・ねえ、岩城さん。」

「なんだ?」

「このまま、ずーっと、お触りだけ?」


眉が下がってる・・・。

確かに、俺の腹に当たってるの、苦しそうだな。


「笑わないでよー。」

「ああ、すまん。」


ゆっくりと、香藤の耳に囁いた。


「好きだ、香藤。」

「うん、俺も!」

「誕生日、おめでとう。」

「ありがと、岩城さん。」





     終





     弓





   2009年6月9日
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香藤君、お誕生日おめでとう!

益々の男っぷり、かっこいいよ〜v

これからも、岩城さんを大切にしてねv