You take my breath away




膝にかかる重さを感じて香藤は目を覚ました。

ふ、と見ると、いつのまにかソファに座る自分の膝枕で眠る

岩城の穏やかな寝顔があった。

(珍しいね、岩城さん。疲れてるのかな・・・。)

そっと上体を起こして彼を見下ろした。

安心しきって眠る岩城を、香藤はじっと見つめていた。

(・・・相変わらず、綺麗だよね・・・。)

手を伸ばして、愛おしげに髪に触れた。

(今度の岩城さんの誕生日、どうしよっかなぁ・・・。)





つけっぱなしのラジオから、ピアノのイントロが流れた。

(・・・なんか、いい感じの曲・・・)


  Look into my eyes and you'll see
          (僕の目を見つめて、そうすればわかる)
  I'm the only one you've captured my love
          (僕こそ君のただ一人の恋人)
  Stolen my heart
         (僕の心を盗み)
  Changed my life
         (僕の人生を変えた。)
  Everytime you make a move
          (君が動くたびに僕は)
  you destroy my mind
         (うっとりとしてしまう)
  And the way you touch
           (君に触れられると)
  I lose control
          (自分を抑えられなくて)
  and shiver deep inside
          (体の底から震えてしまう)
  You take my breath away
           (君は僕の息の根さえ止めてしまう)


(そうだ、俺、岩城さんに出会って人生変わったんだよね。)


  You can reduce me to tears
            (君の溜息一つで)
  With a single sigh
            (僕は思わず、涙を流してしまう)
  Every breath that you take
           (君が息をする音も)
  Any sound that you make
           (どんな声を出しても)
  Is a whisper in my ear
            (僕の耳には囁きに聞こえる)
  I could give up all my life
           (たった一度の口付けのために)
  for just one kiss
            (命さえ投げ出す)
  I would surely die
             (君に愛されなくなったら)
  If you dismiss me from your love
             (僕は間違いなく死んでしまうだろう)
  You take my breath away
             (君は僕の息の根さえ止めてしまう)


(わあ、これ、もろに俺じゃん。)


  I will find you・・・anywhere you go
            (君がどこへ行こうと見つけだすよ)
  I'll get no sleep till find you to
             (見つけて伝えるまでは眠れない)
  tell you when I've found you-
             (伝えたいんだ)
  I love you
            (君を愛していると)


「・・・愛してる、岩城さん・・・岩城さんだけだよ・・・」

香藤は岩城を起こさないように注意しながら、

そっと抱き上げそう囁いて岩城に口付けた。

「・・・う・・・ん・・・か・・・と・・・」

岩城が寝言をいって腕の中で、香藤の肩に頬を摺り寄せた。

幸せそうな微笑を浮かべたその顔を、

香藤こそが幸せな顔をして見つめていた。

「曲は、「You take my breath away」クィーンでした。」

ラジオの紹介を、あわてて反芻する。

「・・・明日、買ってこよ。こんな誕生日プレゼントもたまにはいいかも。」





「はい、これ。」

香藤が差し出した、リボンがかけられたCDを、

岩城が不思議そうな顔で受け取った。

「なんだ、これは?」

「うん。プレゼント。二番目の曲、聴いてね。」

「は?二番目?」

「うん、シングルで売ってなかったからさ。」





香藤が出かけた後、首を傾げながらCDをデッキにセットし、

言われたとおり二番目にスキップする。

(・・・バラードか・・・。)

ソファに寝転んで聞いていた岩城は、

少し慌てたように起き上がり、歌詞カードを取り出した。

その中から、小さなカードが滑り落ちた。

拾い上げたそこに、香藤の文字があった。

『これ、俺の気持ちだよ。』

聞き終わった後、岩城はしばらく両手で顔を覆っていた。

洗面所へ行き、顔を洗って出てきた岩城は、

それから何度もその曲を聞きなおした。





「うわっ?!どしたの?!」

帰ってきた香藤を、岩城の熱い抱擁が出迎えた。

「お帰り。」

「うん。ただいま。」

抱きついたまま、香藤の肩に埋めた顔を上げようとしない岩城に、

香藤が固まっている。

「・・・ねえ、どうしたの?」

「別に、どうもしない。」

「そう?」

(・・・あ、そっか。聞いてくれたんだ・・・。)

リビングのテーブルの上に、

CDを見つけた香藤は笑顔で岩城を振り返った。

「お腹、空いてるだろ?」

「うん。岩城さんの手料理、久しぶりだね。」

「そうだな。いつも、お前にばっかりやらせてすまん。」

「いいよ。俺が好きで作ってるんだもん。」

夕食後のひと時。ソファで香藤が岩城を抱き寄せた。

「ねえ、岩城さん。ずーっと顔赤いんだけど、なんかある?」

香藤の言わずもがなの言葉に、岩城がますます顔を赤くした。

「・・・可愛い・・・。」

「だから!・・・可愛いとかいうな・・・。」

香藤が、思わずといった感じで吹き出した。

「・・・香藤、この曲・・・。」

「うん。俺の気持ち。」

「俺もだ。」

香藤が、心底嬉しそうな顔で岩城を見つめ返した。

「お互いにって、ことだね。」

「ああ、この先も、ずっとな。」

「ベッド、行かない?」

「お前、せっかく・・・。」

「なんで?当然でしょ?」

「わかった、わっかた。」


二人の夜は、長い・・・。




                〜終〜



              2005年1月11日
                 弓




岩城さ〜ん、お誕生日おめでとう〜!


無理矢理書いたって感じですが・・・。
タイトルと中の詩は、クィーンの曲です。
この曲を聞いていて、ふとこれは二人の曲だなと思ってしまった。
人生変わったもんね。
他にもありますよ、二人のことを歌ったようなクィーンの曲って。
に、してもちっともロマンチックじゃない!
せっかくの雰囲気をぶち壊す。
こうじゃないと香藤君じゃないってか・・・。


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