シンボル −香藤サイド− 俺の名前は、シンボルっていうんだ。 ペンダントだよ。 ひとつのプレートを、二つに割ってあって、 片割れは、岩城さんの首に下がってる。 俺は、香藤のほう。 香藤が、岩城さんの誕生日に、俺たちを買ってプレゼントしたんだ。 他にも買いすぎて、岩城さんに怒られてたけどね。 でも、香藤は俺を一番最初に買ったんだよ。 買ったのは俺たちだけじゃなくてさ。 紙袋をいくつも抱えて、家へ帰ったんだ。 で、岩城さんに怒られてた。 無駄遣いするなって。 テーブルの上から見上げた岩城さんは、飛び切りの美人だった。 男だったけどね。 怒ってテーブル叩いて、香藤を叱る岩城さんには驚いたよ。 俺たち、すぐに返品かなって。 でも、岩城さんの胸に、片割れが下がって。 俺も、岩城さんの手で、香藤の胸に下げてもらった。 それ以来、俺はいつも、香藤の胸元にいる。 仕事のときは、バッグの中だけど。 片割れもそうらしい。 俺も、香藤が好きだよ。 ・・・俺の片割れがいる岩城さんも。 俺の身体には、「AMOUR」の横半分が刻んであるんだ。 片割れと、二つでひとつ。 「AMOUR」ってのは、香藤と岩城さんそのままだね。 二人で、一人ってとこがあるよ。 本当に、二人は愛し合ってる。 騒動の後、新婚旅行に行ったとき、やっと結婚式を挙げた。 ・・・順番が逆だって、片割れと笑ったよ。 その後、俺、岩城さんに噛まれて、感じちゃった。 だって、色っぽいんだもん、岩城さんて。 香藤がいつもそう言ってるけど、よくわかるよ。 香藤はいつも、俺を綺麗に手入れしてくれる。 ニコニコしながら。 きっと、岩城さんのことを考えてるんだと思う。 嬉しそうな顔してるの見ると、俺も良かったなぁって思うよ。 二人、よく喧嘩するんだけどね。 こっちから見ると、馬鹿みたいな喧嘩ばっかりなんだよね。 夫婦喧嘩は犬も食わないって、知ってるのかな。 叱られるのは、いつも香藤。 香藤は岩城さんがいないときも岩城さんのことしか考えてない。 仕事中も、オフで家にいるときも。 信じられないくらい岩城さんにいかれてるんだ。 独り言、言ったりしてさ。 見られたら、馬鹿だと思われるよ、あれ。 岩城さんもそうだって、片割れが言ってた。 香藤のことしか、考えてないって。 でも、岩城さんは滅多に香藤にはそんなこと言わない。 香藤が言い過ぎるんだよね。 よくまぁ、毎日毎日、愛してる、とか、好きだよ、とか、言えるよね。 あれじゃあ、岩城さんだって、言いづらいよ。 そりゃ、照れるさ。 でも、香藤、聞きたいみたいだから、たまには言ってやって欲しいな。 年が経つにつれて、香藤はどんどん良い男になってきた。 俺から見ても、格好良い。 それは、外見だけじゃなくて。 中身も、大人になった。 岩城さんに対する愛情も、どんどん大きくなって。 懐が深くなった。 香藤は良くもてる。 男前だし、スタイルいいし、明るくて、誰にでも分け隔てないから。 あからさまに、誘ってくる女や男がいる。 なのに、香藤の奴、全然気付かないんだ。 頭の中、岩城さんのことしかないんだよ。 良く、岩城さんに天然だの、なんだの言うけど、 香藤だって同じじゃないのかな? 岩城さんが、そのことでちょっと心配してるみたいだ。 片割れが言ってた。 岩城さんて、ああ見えて、案外、焼きもち焼きなんだって。 この間も、なんかあったらしい・・・。 それ以来、香藤は岩城さんのスケジュールをチェックする回数が増えた。 マネージャーさんに電話するのも、増えたしね。 香藤が、心配するのも無理はないよ。 岩城さん、物凄く色っぽくなっちゃって。 でも、馬鹿だよ、みんな。 岩城さんのこと、知らなさ過ぎるよね。 香藤を裏切るわけないじゃん、あの岩城さんが。 これから先も、ずっと、俺は香藤の傍にいる。 俺の片割れも、岩城さんとずっといる。 たまに、片割れと顔見合わせて、笑っちゃうこともあるけどさ。 ホンと、ラブラブなんだよ、この二人。 でもさ・・・。 そこが、いいんだけど。 ま、二人がお爺さんになっても、 ずっとずっとその後も、見守るのが俺たちの役目だから。 出来たら、お墓の中にも一緒に入れて欲しい。 片割れと一緒にね。 〜終わり〜 弓 2005年6月15日 |
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