Crazy Little Thing Called Love 13










「あ、あの、岩城さん、あのさ・・・。」

香藤が、岩城に腕を掴まれ、

ベッドの上で慌てていた。

「俺がどんなに辛かったか、お前にわかるか?」

岩城が香藤の中に指を入れたまま、

口を尖らせて睨んだ。

「ご、ごめん、俺・・・。」

「達かされて、身体が火照ったまま放り出されて。

後ろが疼いたまま、眠れなかった。

朝までだ。」

こくこくと、香藤は頷いて岩城を見上げた。

「お前が俺をこんな身体にしたくせに、それを言うのか?」

「ごめん!今のは俺が悪い!

ほんとにごめん!」

岩城は、剥れた顔で指を引き抜き、

掴んでいた香藤の腕を放り出した。

「俺は寝る。」

そう言って、岩城は香藤に背を向けてベッドに横になった。

頭まで毛布をひき被った岩城を見つめながら、

香藤は派手な嘆息を漏らした。






翌朝、香藤はベッドの上で目を開いたまま、

ぼ〜っと、天井を見上げていた。

隣から、岩城の静かな寝息が聞こえてくる。

首を捻って岩城を見つめ、肘をついて身体を起こすと、

さらさらと額を流れる前髪にそ っと触れながら、

香藤は溜息をついた。

「そうだよね・・・岩城さん、男なんだよな〜・・・。」

昨夜、岩城に挿れられた指の感触が、

ありありと後に蘇ってきた。

「・・・どうしよ・・・。」

溜息をつきながら見つめていると、

もそもそと岩城が身体を動かした。

寝返りをうち、香藤の方を向くと、ゆっくりと瞼が開いた。

「・・・あ、岩城さん、おはよ。」

「うん・・・おはよう。」

微かに微笑んで起き上がり、岩城はベッドから降りた。

「岩城さん、ちゃんと眠れた?」

香藤がバスルームに入ろうとする岩城に声をかけた。

「ああ、まぁな。」

岩城は振り返ると、そう答えた。

「そ、よかった。」

香藤の顔に、何か言いたげな色を感じて、

岩城は口を開きかけ、

思い直してバスルーム のドアを開けた。

「・・・う〜〜・・・まだ怒ってんのかなァ・・・それとも・・・。」

香藤は岩城のいなくなったベッドの上で、一人思い悩んでいた。




「でもな〜・・・岩城さんがそうしたいんならさ〜・・・。」

岩城がシャワーを浴びて出てくると、

香藤の呟きが聞こえた。

ベッドの上で、腕を組んで唸っている香藤に、

岩城は首をかしげた。

「俺がどうしたって?」

「うわっ!いやっ、なんでもない!」

「なにを慌ててるんだ?」

岩城が眉をひそめて見つめると、

香藤はじっと岩城を見返した。

「ねぇ、岩城さん、あの・・・。」

「なんだ?」

「あの、ね・・・うんと・・・。」

毛布を握り締めて言いよどむ香藤に、

岩城は両手をついてベッドへ乗り上げると、その 顔を覗き込んだ。

「なんだ?どうした?」

「あ、うん・・・あの、さ、そのォ・・・まだ怒ってる?」

ふ、と岩城が目元で笑った。

黙って香藤の髪に指を差し込むと、くしゃくしゃと撫でた。

「さて、な。」

「え〜?なにそれぇ〜?」

香藤に返事を返さず、

岩城は笑いながらベッドルームのドアを開けた。

「お前もシャワー浴びてこい。朝食、食べに行くぞ。」

「あ!待っててよ!」

シーツを跳ね散らかして、香藤はベッドから飛び降りた。






午後、なにやら朝から落ち込んでいる様に、

見える香藤の腕を掴んで、

ソファまで引っ張 っていくと、

岩城はじっとその顔を見つめた。

「どうしたんだ、香藤?」

「あ、う〜ん・・・。」

香藤は、顔を顰めてカリカリと頭を掻くと、岩城を見つめ返した。

「・・・あのさ、岩城さん、俺のこと抱きたい?」

「は・・・?」

ぽかん、として見つめ返す岩城に、

香藤が重ねて同じことを聞いた。

「なっ・・・なに言ってんだ?!」

「え?だって、岩城さん、昨夜、俺に指、挿れたじゃない。」

香藤のその言葉に、岩城は額を押さえて顔を顰めた。

「バカか、お前・・・。」

「バカって・・・。」

「それで、落ち込んでたのか?

俺が、お前を抱きたいと思ってると?」

「うん。違うの?」

呆れたように溜息をつく岩城に、

香藤は真顔で言葉を継いだ。

「岩城さんだって男だしさ。そういう気持ちっていうか、

衝動っていうか、ないわけじ ゃないって・・・」

「あのなぁ・・・お前と俺、一緒になってどれくらい経つのか、

わかってるか?」

「当り前じゃない!9年だよ。」

「で、その間、俺が一度でもお前を抱きたいって、

言ったことがあるか?」

ぴたり、と動きを止めて、香藤は岩城を見つめた。

「ない。」

「で、なんで俺がそう思うなんて、考えるんだ?」

「だって・・・。」

香藤の上目遣いに、岩城は少し笑った。

「悪かったよ。そういう風にお前が思うとは、

考えもしなかった。

そういう意味じゃな い。つい、悪ふざけしたんだ。

辛かったのに、お前が、あんなこと言うから。」

「ごめん・・・。」

香藤は、こつん、と岩城の額に自分の額をあてた。

「でも・・・いいの?

岩城さんがそうしたいんなら、いいよ?」

「今更か?」

「今更って・・・。」

岩城は額を付けたまま、

香藤の頬を指で触れると、ゆっくりと微笑んだ。

「俺は、お前を受け入れるのが幸せなんだ。

お前の腕に抱かれてると、とても幸せで、

そんなこと、思いもしなかった。

それより、お前の方こそ、

そうしたいんなら俺はかまわないが?」

そう言って、くすくすと笑う岩城に、香藤は苦笑した。

「う〜ん・・・抱いて欲しくなったら、言うよ。」

「ああ、俺はいつでもいいぞ。」

岩城の可笑しそうな顔に、香藤は口を尖らせた。

「それ、本気で言ってないでしょ?」

「わかるか?」

「当然!」

岩城が声を上げて笑い、

剥れる香藤の頬に、そっと手の平を滑らせた。

ゆっくりとそのまま頬を引き寄せ、

唇を重ねて、啄ばむようにしながら、

岩城は片手で 着ているシャツのボタンを外し始めた。

香藤がそれに気づいて、

岩城の手に自分の手を重ねて、指を絡めた。

岩城はそれを香藤に任せ、両腕を香藤の首に絡み付けた。

「・・・んっ・・・」

香藤の手が岩城の素肌に滑り、乳首を捉えた。

「・・・あぁっ・・・」

顎を反らす岩城の首筋に、香藤は唇を押し当て、舌を這わせた。

「・・・ぁんっ・・・」

2日前、途中で放り出された肌がその時の熱を思い出し、

瞬く間に火照り始めた。

香藤の手が岩城の腰に絡み、乳首を口に含んだ。

岩城の背が仰け反り、

香藤を抱えたまま、ソファに横たわった。

「はぅんっ・・・」

香藤の舌の動きに合わせるように岩城の腰が揺らぎ、

ぎゅ、と香藤の髪を握りこんだ。



「・・・ぃあぁっ・・・んっぅあっ・・・」

床の上に、2人の服が、脱ぎ散らかされていた。

全裸で絨毯の上に転がり、

自ら膝裏を掴んで、岩城は両脚を大きく開き、

その間に香藤 は顔を埋めていた。

ぴちゃぴちゃと音を立てて、

香藤は岩城の蕾を舐め尽していた。

「・・・ひ・・・ぅんっ・・・」

香藤の舌が蕾に差し込まれ、岩城が仰け反った。

膝を掴む指の関節が、白くなるほど強く握り、顎が上下した。

「・・・んぁっ・・・はっ・・・あぁっ・・・」

襞の一つ一つを舌で弄り、

岩城が小刻みに腰を振り出すほどの愛撫を続けた。

「・・・はぅっ・・・んんっ・・・」

ぐい、と香藤が指を差し込んだ。

「いっ・・・ゃあぁっ・・・」

ずぶずぶと指が沈みこみ、壁の奥を引っ掻いた。

「もう・・・もぉっ・・・香藤・・・っ!」

岩城が、下腹に力を入れて悲鳴を上げた。

それに気づいて香藤は、舌で袋を舐めるように掠めて、

怒張した岩城の茎の、根元から 先端へ舌を這わせ、

カリに歯を立てるように口に含んだ。

「・・・あぁっ、あっ、ぁっ・・・んくっ・・・!」

堪えられずに、岩城が熱を吐き出し、それを香藤が嚥下した。

身体を起こすと、蕾に指をいれたまま、

香藤は岩城の顔を上から覗き込んだ。

「・・・あ、ふ・・・んっ・・・」

熱い息を吐きながら真っ赤に染まった目元で香藤を見上げると、

岩城はゆっくりと肘をついて起き上がった。

濡れた唇の口角が上がり、

その妖艶な顔に、香藤の喉が、ゴクリ、と鳴った。

「俺のやりたいように、やらせろ・・・。」

「え?」

岩城は蕾に香藤の指を入れたまま、肩を掴んで押し倒した。

「お前は動くな。俺の好きにする。」

大きく両脚を開いて香藤に跨ると、

上から睨みつけるように見下ろした。

呆然としていた香藤は、はっとして岩城を見つめると、

にやっと笑って中に潜らせた指を、くい、と捻った。

「んぁあっ・・・あぁっ・・・」

膝立ちした腰を揺らして、岩城が仰け反った。

「・・・んっ・・・バカっ・・・抜けっ!」

荒い息のまま、岩城は香藤の腕を掴んで、指を引き抜いた。

「あ〜、もう!いいじゃん!」

「俺のやりたいようにやらせろと言ったんだ。文句あるか?」

額に汗の浮んだその顔に香藤は、にこっと笑った。

「ないよ。じゃ、岩城さんの好きにして?」

ふふ、と岩城が笑った。

腰をずらして香藤の腿の上に座り込むと、

愛しそうに微笑んで、香藤の茎を両手で包み 込んだ。

指を絡めて軽く扱き、根元から擦りあげて、

先端を指で撫でると、見る見るうちに、そ れは質量を増した。

「岩城さん、上手すぎだって・・・。」

香藤が、顎をそらして熱い息を吐いた。

「どうすんの?」

香藤が顎を引いて、岩城の顔を見下ろした。

岩城は自分が育てたそれに手を添えると、

膝でいざって前に進んだ。

見上げる香藤に顔を近づけて、

岩城は香藤の額と鼻先にキスをした。

チュ、と音を立てて香藤の唇を吸うと、

岩城は身体を起こして蕾にいきり立った茎を押 し当てた。

「はっ・・・ぁ・・・んふっ・・・」

香藤の肩を掴んで、ゆっくりと膝を折り、

岩城は香藤を体内に押し込んだ。

腰を落としきって根元まで納めると、

岩城は天井を向いて熱い息を吐いた。

「・・・んん・・・」

香藤は岩城の腿を撫でながら、その顔を見つめた。

大きな手の平が腿を這うと、岩城は口元をほころばせた。

「気持ちいい?」

「うん・・・」

香藤の手が岩城の尻を撫で、揉みしだいた。

「・・・あぁ・・・か、とう・・・」

揉まれるのに合わせるように、

仰け反って、岩城の腰が揺れ始めた。

かすかな声を漏らす岩城に、

香藤は撫でる手をそのままに、微笑んだ。

「ねぇ・・・」

「んっ・・・」

岩城が、溜息をつくように香藤に視線を向けた。

その、濡れた瞳に香藤はにっこりと笑った。

「・・・京介、もう、怒ってないよね?」

「え・・・。」

ぴたり、と岩城の動きが止まった。

ぞくりと身体を震わせて、岩城は香藤を見つめた。

「どうしたの、京介?」

途端に、岩城の身体がぶるっと揺らいだ。

肌が粟立つ感覚が身体を走り、

香藤を見つめる瞳から、ぶわっと涙が溢れた。

「・・・香藤・・・」

「違うでしょ?洋二、だよ?」

「・・・うん・・・洋二・・・」

そう答える岩城の腕を掴んで、香藤は下から突き上げた。

その衝撃に、岩城は顔を左右に振って声を上げ、

汗と、溢れる涙が飛び散った。

「・・・ひっ・・・あぁっ・・・」

「可愛いね、京介・・・」

「ああぁっ・・・」

香藤が再び名を呼んだ途端、

勃ち上がっていた岩城の茎が、跳ねた。

「・・・んんっ・・・」

「おわっ?!」

「あ、あ、あ、・・・」

香藤の腹や胸、顔にも、岩城の精がかかった。

驚いて見上げると、岩城が眉を顰めて小刻みに震えていた。

くす、と笑う香藤の声に、岩城は瞳を開けた。

「・・・うわ・・・す、すまんっ・・・」

慌てて、岩城は身体を折ると、

香藤の頬についた雫を舐め取った。

片方の頬にも、雫があるのに気づいて、

岩城はそれを指で掬い取った。

と、香藤がその指を取り、ゆっくりと口に含んだ。

「あ・・・」

そこから、身体中に疼きが伝わるようで、

岩城は思わず肩を竦めた。

指を引こうとして、香藤の手に掴まれた手がびくともせず、

岩城は顔を真っ赤に染めた 。

「いいって・・・」

「なんで?美味いよ?」

「ばっ・・・馬鹿っ・・・」

香藤が音を立てて、岩城の指をしゃぶった。

くすくすと笑う香藤に、岩城は恥ずかしげに肩に顔を埋めた。

「お前が名前なんか呼ぶからっ・・・」

「いや?」

「ち、ちがっ・・・」

顔を上げ、まだ、涙の残る瞳で岩城は香藤を見つめた。

「可愛いよ・・・」

香藤はそう言いながら、

腹に飛び散った岩城の精を指でなぞった。

その指を、岩城が掴んだ。

ぺろり、とそれを舐めて、

岩城は香藤の脇に両手をついて、身体を起こした。

「・・・んっ・・・」




腰を振って香藤を取り込み、

自ら快感を追いかけ始めた岩城を、

香藤はその腰を支えて 見上げた。

「・・・あんぁっ・・・んぅっ・・・はんっ・・・」

徐々に身体を支えることが出来ずに、

岩城の腕が震え始めた。

耐え切れなくなって、

身体の上に倒れこんできた岩城の腕を、香藤が支えた。

その腕にすがって、岩城は背を仰け反らせた。

断続的に漏れる声が、蕩ける襞が、

岩城の得ている快感を香藤に伝える。

香藤の腕を掴む岩城の手に力が入ったのを感じて、

香藤は下から岩城を突き上げた。

「・・・ひっ・・・」

びくん、と岩城の背が反り返り、

喉を引き攣らせる岩城を香藤は、容赦なく追い立てた 。

「・・・やぁっ・・・洋二っ・・・んっあぁっ・・・」

ガクガクと身体を震わせて、

岩城は香藤の上で身体を捩り、身悶えた。

「もぉっ・・・」

縋るような視線を向ける岩城の腕を引き寄せ、

両腕に抱え込むと、

香藤は身体を反転さ せた。

背が絨毯についた途端、

岩城の両腕と両脚が、香藤に絡みついた。

腰を揺する岩城の切迫した息遣いに、香藤はくすりと笑った。

「そんなに欲しい?」

目元に紅を浮かべた顔で、岩城は香藤を睨んだ。

「・・・うるさい・・・2日も放っておいたくせに。」

「放っておいたわけじゃないよ。」

そう言って、香藤は岩城の尻を掴んだ。

「・・・んあぁっ・・・」

叩きつけるように動き出した香藤を、

岩城は身体中を震わせて受け止めた。

香藤の両手に納まってしまうほどの細い腰を擦り付け、

暴れまわる香藤の茎に、岩城が 身体中で反応する。

快感に四肢を震わせ、嬌声を上げた。




「まぁ、なんにせよ、よかったよな。」

廊下を隔てた部屋で、チャーリーが笑っていた。

岩城の甲高い悲鳴が聞こえている。

ラウールが頷いて、2人は顔を見合わせた。

「ま、痴話げんかだからね。」

「なんだか、おかしな話だが。」

チャーリーがそう言って、くすっと笑った。

「キョウスケの声が聞こえないってのは、

妙に心配になるもんだな。」

「あ、俺も。」

そう言って、ラウールも白い歯を見せた。

「静かすぎて、眠りにくかったよ。」

「相当怒ってたってことだな。」

「可哀想だったね。」

「どっちが?」

チャーリーの質問に、ラウールは吹き出した。

「ヨージが。」

笑いながら頷いて、チャーリーは肩を竦めた。

「尻に敷かれてるんだ、仕方ないさ。」

2人は、声を上げて笑った。




岩城の腕を首に絡みつかせたまま、

香藤が膝をついて起き上がった。

「やっぁんっ・・・」

その頼りなさに、岩城が声を上げ、香藤の肩を掴んだ。

岩城の内腿を押さえて、香藤は岩城の股間に視線を向けた。

袋が縮こまり、腹につくほどきつく反り返った岩城の茎から、

ぼたぼたと雫が垂れてい た。

それを見た香藤が、微笑んで、

大きな手の平で、岩城の内腿を撫で摩った。

「・・・はっ・・・あん・・・」

その手の動きに、岩城が腰を捩った。

「・・・か・・・香藤・・・」

「ん?」

熱い息で、岩城は香藤を見上げた。

香藤を包み込む壁が蠢き、

銜えこんだ蕾がひくひくと収縮する。

汗に塗れ、欲望を隠そうともしないその顔に、

香藤は顔を緩めた。

「欲しいって、顔に書いてあるよ。」

「・・・淫乱だって・・・言いたいのか?」

「うん。」

嬉しそうに答える香藤の顔に、

少し剥れていた岩城は、思わず笑った。

「もの凄く、嬉しいよ、俺は。

俺が欲しい、って隠さないでいてくれるのはね。」

「ああ・・・欲しい・・・。」

一頻り唇を貪ると、香藤は岩城を抱えなおした。

そう言って、腰を引き始めた香藤に、岩城の眉が下がった。

「ばっ・・・バカ・・・ふぁっ・・・んんっ、ぬ、抜くな・・・っ・・・」

「抜かないよ。3日分、あげるからさ。」

そう答えて、香藤は岩城の奥まで勢いよく貫いた。

「・・・ひぃいぃっ・・・ああぁっ・・・」

縦横に襞を抉る香藤の茎が出入りする。

燻っていた岩城の中が、3日ぶりの刺激に歓喜していた。

「もっと?」

「・・・んぁっ・・・うぅんっ・・・」

呻き声を上げながら、岩城は首を縦に振った。

「あぁっ・・・洋二っ・・・よぉじっ・・・」

融けた岩城の襞が、香藤の茎に絡みついた。




「・・・ひん・・・ひぃ・・・あ、くっ・・・」

後頭部を支えにして、

全身を硬直させて岩城の身体が反り返った。

その中へ、香藤は自分を叩きつけ、

その感覚に、岩城の身体がびくん、と震えた。

「気持ちいい、京介の中。」

「・・・ん・・・」

朦朧とする岩城の唇を、香藤はそっと舐めた。

「愛してる、京介。」

「うん・・・俺も・・・。」

波打つ身体が納まるまで、

午後の風の中で2人は抱きしめあっていた。






「いらっしゃいませ。」

ドルチェ&ガッバーナのブラックスーツを着て、岩城が現れた。

その後から、ラウールが続く。

にこやかな笑顔で頷くと、

ウェイターは先に立って席まで案内した。

「洋二は、後から来ます。」

「はい、かしこまりました、マダム。」

岩城のために椅子を支えながら、ウェイターが頷いた。

いつものように、

ラウールが隣のテーブルについて、あたりを見回す。

食前酒が届いて、岩城がそれに口をつけかけた時、

メインダイニングの入口付近が、大 きくどよめいた。

恥ずかしいくらい大きな、

純白の百合、カサブランカの花束を抱えた香藤が、

そこに立 っていた。

周囲の注目を集めながら、

ウェイターが微笑み、案内する後を、

香藤はガリアーノの派手なストライプのスーツを着て、

颯爽と岩城に向かって歩いてきた。

岩城は、それを見てゆっくりと立ち上がった。

「お待たせ。」

香藤が差し出すその巨大な花束を、

岩城はゆったりと笑って受け取った。

岩城のダークスーツに、その白が映えて見えた。

「先に行ってろと言うから、何かと思ったら。」

「うん。」

ウェイターが岩城から受け取った花束を、

空いた隣のテーブルに置き、下がっていった 。

こぼれ落ちそうなカサブランカを見ながら、

岩城はその花に負けない微笑を浮かべた。

香藤がその岩城の左手を取ると、結婚指輪が目に入った。

その上にキスを落とし、

香藤は岩城の肩を抱き寄せると、軽く唇を合わせた。

「仲直りの印、って言うか。」

「ありがとう。」

ふふ、と岩城が笑って二人は席についた。

隣の席で、仲良くディナーを取り始めた二人を、

ラウールとチャ ーリーは、ほっとしながら眺めた。

「ま、良かったな、いつもの2人に戻って。」

「いつもの夜も、戻ってくるな。」

こっそりとそう囁きかわして、2人も食事を始めた。







      続く



      弓


    2006年9月9日
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