Crazy Little Thing Called Love 8










「おはよう。」

雅彦がラフなシャツでダイニングテーブルについた。

「おはようございます。」

金子がにこやかに笑って頷いた。

「ちょっと寝すぎたみたいだな。もう、昼近い。」

「昨日が遅かったですから。」

「ああ、びっくりしたな。

こっちの披露宴って言うのは、あんなに夜中までやるんだな。」

「そうですね。ま、香藤さんのですから、余計に。」

そう言いながら、

金子が雅彦の前にカフェオレがたっぷりと入った、

大きめのマグカップを置き、

チャーリーがブランチをサーブした。

田舎風オムレツとバゲット。

「チャーリーも、奥方に料理を習ったくちかい?」

雅彦が、フライパンを持つチャーリーを眺めながら聞いた。

「いや、俺はけっこう自分でやってましたよ。

独身が長かったんで。」

「そうなのか。俺は、まるっきりだめだ。」

フライパンを片付けてチャーリーがテーブルにつき、

ラウールも混じえて、4人はテーブルを囲むと、雅彦が笑った。

「二人はまだ寝てるのか?ま、仕方ないな。」

そう言いながらカップに口を付けかけた。

「・・・あ!・・・だ、だめだ、香藤!

兄貴がいるって言ってるだろ!」

突然、岩城の声が聞こえてきた。

明らかにうろたえた色の見える声で、

雅彦は飲みかけたカフェオレに、

思い切り噎せ返った。

「・・・だ、だめだってっ・・・聞こえるからっ・・・」

静まり返るダイニングルームに、岩城の声だけが響いた。

「・・・いい加減、こんな時間、起きてるに決まってるだろ!」

「あちゃ・・・。」

思わず金子が声を上げ、呆然とする雅彦から、

3人は気の毒そうに視線をそらした。

「昨日の朝だって、おまえ・・・!」

「あれぇ?自分から乗っかってきたのは、誰かなあ?

しかも、すっごい色っぽく寝巻きの前、捲っちゃってさぁ?

あれで勃たなかったら、俺、病気だってくらいだったね。」

「あ、あれは!お前が焦らすから!」

「喜んでたくせに。」

じゃれあっているのが、あからさまにわかるとんでもない会話に、

グ、と雅彦の顔が強張った。

「それに!結婚式だから、1回だけの約束だっただろ!

お前に任せたら、暴走するじゃないか!」

雅彦が、拳を握り締めた。

「・・・香藤ッ・・・馬鹿!や、やめっ・・・」

聞こえてくる声に、雅彦の手がぶるぶると震えだした。

手の付けられない皿の上のオムレツが、冷えていった。




「やめろって!」

「なんで?」

岩城が、ベッドで後から抱きこむ香藤の腕を外そうと、

必死になって身体を捻じった。

「何でって、当り前だろ!頼むからっ・・・。」

「やだ。」

香藤はそう言って、岩城の項に唇を這わせた。

「・・・ぁっ・・・」

そろり、と香藤の手が裾を割って中へ潜りこんだ。

「あっ・・・か、香藤!」

「我慢できるの?」

「・・・こ、このっ・・・はぁっ・・・」

さわさわと、香藤の手が茎を撫で、岩城の腰が揺れた。

「あふっ・・・ん・・・っ・・・」

「ほら、我慢できないじゃん?」

後から抱き込んだまま、香藤の片手が岩城の乳首を捉えた。

「・・・んぁっ・・・」

そこはすでに硬く立ち上がり、香藤の指に震えた。

項にキスを落とし、器用に顎で襟をずらしていきながら、

香藤は岩城の茎から手を放した。

「・・・やっ・・・」




「・・・・・・。」

雅彦の眉間に、派手な縦じわがよった。

聞いたこともない、鼻にかかった甘えた色の浮ぶ、弟の声。

強請る姿さえ想像できるその声に、

雅彦は絶句していた。

ラウールが、その雅彦を気の毒そうに見ていた。

重たい息をついて、雅彦がカップに口をつけた。

その間にも、岩城の声は続けざまに上がった。




「・・・やっ・・・香藤ッ・・・」

岩城の上げた声に、香藤がふふ、と笑った。

「欲しいんだよね?」

香藤が片手で岩城の顎を捉えて、

自分のほうを向かせると、

熱い息をはく唇をぺろり、と舐めた。

「・・・はっ・・・」

片手で岩城の寝巻きの袷を開きながら、

香藤は岩城の唇を喰んだ。

「・・・んんっ・・・」

岩城の舌が香藤のそれを追いかけ、差し出される。

ゆっくりと香藤の手が胸を這い、

大きな手の平が乳首を包み込むと、

岩城の息が一層上がった。

「・・・は・・・んふっ・・・」

薄っすらと開いた瞳が、ぼうっと霞んでいるのを見て、

香藤はくすりと笑った。

唇を啄ばみながら茎を掴むと、

岩城の身体がビクリ、と震えた。

「・・・あぁっ・・・ふっ・・・んっ・・・」

抱き込みながら、

香藤は怒張した自分の腰を岩城の尻に押し付けた。

「ねぇ、岩城さん・・・。」

「・・・あ・・・」

それを香藤のはいたパジャマの布越しにありありと感じて、

岩城の頬が熱く火照った。

「はうっ・・・っ・・・」

香藤が岩城の茎の根元を握り上げた。

「あっ・・・あっ・・・」

無意識に背が反り、岩城が腰を香藤に擦り付けた。

袷が崩れて露わになった項や肩に、

香藤が唇を押し付け、痕を残した。

岩城の茎を握りこんだまま、香藤は身体をずらし、

寝巻きを止めている扱きを解いて、

岩城を全裸にすると、零れる先走りを掬い取り、後へ指をのばした。

岩城の内襞が、入ってくる香藤の指に震えた。

「・・・あぁっあっ・・・」




「ごほっ・・・!」

雅彦が、カフェオレを噴出した。

「げほっ・・・」

ラウールが黙って立ち上がると、

ナプキンを持って雅彦の零したコーヒーを拭きにかかった。

「・・・すまん・・・けほっ・・・」

「いえ。」

「入れなおしましょうか?」

金子が、片手を差し出すのに、

カップを渡しながら、雅彦は嘆息した。

「・・・ミルク、入れないでくれ。」

「あ、はい。」

「・・・ふあっ・・・か、香藤ォっ・・・」

雅彦が肩で息をついて、天井を見上げた。




「・・・あぁっ・・・」

岩城を後から抱きこんだまま、

香藤は岩城の中の襞を指で撫で回した。

「・・・はっ・・・あはっんっ・・・」

岩城の脚が、横向きの姿勢のまま、じりじりと拡がり始める。

それを感じて、香藤が奥へと指を進めた。

「・・・あんぁっ・・・そこっ・・・」

ビクリ、と岩城の身体が弾んだ。

「ここ?」

こくこく、と岩城が頷いた。

「ここをどうして欲しいの?言ってみて?」

喘ぎながら、岩城は首を捻じって香藤を見上げた。

「ん?ねぇ、どうして欲しい?」

「・・・うぁっ・・・あぁっ・・・」

指を潜らせながら、

片方の手で乳首を弾き、香藤は岩城の頬を舐めた。

ぴたり、と動きを止めた香藤の指に、

岩城は腰を揺らして強請った。

「ね、どうして欲しいか、言ってみて。」

「・・・ぁ・・・か・・・かとぉ・・・」

泣き出しそうな顔で、岩城は熱い息を吐いた。

恨めしそうに見あげ、香藤の肩に頬を擦り付けた。

「・・・もっとっ・・・強く・・・」

「どこを?」

そう言いながら、香藤は指で壁を弾いた。

「・・・んあぁっ・・・そこっ・・・!」




「・・・そこって、どこだよ・・・。」

ぼそり、と雅彦が零した。

それを聞いて、今度は3人が噴出した。

雅彦の顔を見て笑うに笑えず、3人は笑いを引っ込めると、

顔を見合わせそっと視線をそらした。




「ここを?」

「はんんっ・・・」

香藤が、くい、と指を曲げた途端、

岩城の背が反り返り、苦しげに顔を顰めた。

「言わないと、このままだよ?」

肩で息をしながら、岩城は耐え切れないように、首を振った。

「・・・も、もおっ・・・」




雅彦が、肩で嘆息した。

動こうにも、身体が動かない。

ふ、と3人を見て雅彦は、愕然とした。

驚いていない、3人。

まさか、いつもこうなのかと疑いつつも、聞くに聞けずにいた。




「欲しい?」

「・・・頼む・・・香藤・・・」

岩城がシーツを握り締めて、搾り出すように声を出した。

全身が震えて、眦に涙が浮んでいた。

「・・・も・・・もう・・・」

「だめ。どうして欲しいか、言ってよ。」

香藤は舌先で、岩城の耳の裏を舐めながら、言葉を続けた。

岩城は、肩で息をしながらその香藤を振り返った。

「お前・・・意地が悪すぎる・・・」

くすり、と笑う香藤に、首を振り、

腰を押し付け、岩城は顎を反らせた。

焦らされるだけ焦らされて、岩城は耐え切れずに喘いだ。

「・・・香藤ォ・・・早っ・・・くっ・・・挿れてくれ・・・っ・・・!」




思わず、チャーリーが口笛を吹きそうな顔つきをして、

額に青筋のたつ雅彦の顔を見て、

それを思いとどまって首を振った。




香藤が岩城の中から指を抜き、

パジャマを脱いで放り投げ、

ベッドに突っ伏したままの岩城の腰を掴んで上げさせた。

「・・・んっ・・・」

香藤が膝裏を掴むと、

岩城はされるに任せて膝を左右に拡げた。

ぴちゃり、と音を立てて、

香藤は岩城の蕾を舌で弄り、襞をかき回した。

「・・・んぁっ・・・はぅんっ・・・」

枕を握り締めた岩城の顎が、跳ねた。

パタパタと音を立てて、先走りがシーツに零れ落ちる。

執拗に舐めるだけの香藤に、

岩城が焦れて高く上げた姿勢のまま、腰を揺すった。

香藤は微笑んで、

岩城の引き締まった尻に唇を押し当てて、起き上がった。

「・・・あん・・・」

岩城の背に、キスを一つ落とすと、香藤はとば口に茎を押し当てた。

「・・・あぁあッ・・・洋・・・二っ・・・」




一際高い岩城の声が聞こえてきた。

その後からは、衣擦れの音と、ベッドの軋む音。

岩城の上げる声と荒い息遣い。

静まり返るダイニング・ルームに、

4人が食事をする食器のあたる音と、

時折誰かの嘆息だけがしていた。




「・・・あっぁあっ・・・んぅっ・・・」

後から貫く香藤に、肩が落ち枕に頬を押し付けて、

揺すられるのにあわせて、黒髪を揺らし、

岩城は止めなく声を上げていた。

引き摺るように岩城の内襞を擦り、

突き上げ、香藤はうねる背中に手を這わした。

「・・・あくっ・・・」

軽く仰け反り、岩城の茎が弾けた。

ビクリと震える内壁でそれを知ると、

香藤は追い上げにかかった。

「・・・ひぁあっ・・・!」

岩城の背が仰け反り、香藤がぶるり、と身体を震わせた。

荒い息を整えると、香藤は岩城の身体をベッドに伸ばし、

片足首を掴んで、

岩城の中に挿れたままで身体を回転させた。

中を引き摺られる感覚に、岩城の口から声が漏れた。

「・・・あぁんっ・・・」

「大丈夫?」

「・・・ん・・・」

岩城が瞳を閉じたまま、息で返事を返した。

半開きの唇を喰むと、

岩城の方から舌を差し込み、貪るように吸い上げた。

香藤の手が身体の脇を、

上から下まで這い、ゆっくりと撫で回した。

「・・・ぁぁ・・・」

溜息のような声が、岩城の唇から零れた。

その顔を眺めながら香藤が笑った。

「・・・な、に・・・?」

「うん。また、一段と色っぽくなったなァと思って。」

バカ、と岩城が香藤を睨み上げた。

半分蕩けたような岩城の瞳に、香藤の茎が熱を持った。

「・・・ふっ・・・」

その熱に岩城の疼く蕾が震えた。

岩城の唇を舐めながら、ゆっくりと香藤が腰を引き始めた。

「・・・ぃ・・・やだっ・・・抜く・・・ッ・・・」

「わかってるよ。」

耳元で優しい声で香藤が囁くと、岩城の熱い息が漏れた。

とば口まで腰を引き、香藤はゆっくりと腰を押し戻した。

「・・・んっ・・・んぁあぁぁ・・・」

絶え入るような声を上げて、

岩城は香藤に四肢を絡めて縋りついた。




「あらら・・・。」

立ち上がりかけて、チャーリーはまた椅子に座り直した。

「ま、しょうがないんじゃないかな?」

金子がそう言って笑った。

ラウールは、肩をすくめてチャーリーと金子を見ると、

「この前の、結婚式の時と同じだろう?」

そう言って、笑った。

3人の様子から、

雅彦はこれがいつものことだとわかって、青くなっていた。

「・・・はぁっんっ・・・いいっ・・・」

震える岩城の声が、響いた。

途端に、雅彦の口から、長い嘆息が漏れた。




香藤が、ベッドの上に肩をつけたままの岩城の腿を、

両脇に抱えこんだ。

ぶるぶると震える腿が、香藤に岩城の欲情を伝える。

岩城の、真っ赤に染まった顔を見て、

香藤がにっこりと笑った。

「・・・よぉ・・・じっ・・・」

少しの間動かないだけの香藤に、岩城が焦れて名前を呼ぶ。

掴まれた腿を揺する岩城に、

香藤は嬉しそうに頬を緩ませた。

「いくよ。」

香藤はそう言うと、勢いよく腰を引き、岩城の襞を突き上げた。

「・・・ひぃ・・・っ・・・」

岩城の悲鳴のような嬌声が上がった。








      続く




      弓




   2006年7月11日


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