Much Ado About Nothing 14








「ああっ」

ソファに寝そべり、片方の足の踵をソファの背に引っ掛け、

もう片方の足を、香藤の腰に絡ませ、両腕を逞しい背に回し、

岩城はきつい突き上げを受け止めていた。

「・・・んあっ・・・ふっ・・・」

薄いカーテンから光が差し込み、リビングの床に散らばった、

脱ぎ捨てられた服を照らしている。

岩城の白い身体が仄かに浮き上がり、香藤の目を楽しませた。

「・・・あぁっ・・・ひぁっ・・・」

上気した肌に汗が滲み、項を伝った。

香藤がそれを舐めあげ、そのまま仰け反った顎のラインに添って、

舌を這わせた。

「・・・香藤ォ・・・」

震える唇で呼ぶ岩城に、顔を上げて覗きこんだ。

情欲に濡れた瞳を見て、満足気に笑うと、

香藤は岩城を抱きこんだ。

「一回、終わっとこうかな。」

「一回で・・・終わったためしが、ない気がするが。」

香藤の呟きに、上がる息で岩城が答えると、

彼は声を上げて笑った。

「まぁ、いいじゃない。」

よいしょ、と声に出して腰を抱え直されて、

岩城は香藤の肩を掴んだ。

「うあぁっ・・・ひっ・・・」

思っていたよりも強い衝撃に、岩城の悲鳴が上がった。

「・・・最ッ高だよ、岩城さん。」

「あっ・・・あァッ・・・」

音を立てながら出入りする香藤のペニスが、

遠慮もなく柔襞を蹂躙する。

いつもより性急なその突き上げに、岩城の眉間が寄せられた。

「・・・んぁあぁっ・・・」

奥でペニスが弾けて、岩城が仰け反って硬直した。

それを見て、香藤はにんまりと笑った。

「いつもより早いね。」

「・・・お前のせいだろう。いったい、なんだって・・・ふっ・・・」

まだ文句を言いかけるのを無視して、

香藤はずるりと自身を岩城の中から抜くと、

彼の腕を引いて抱き上げた。

「おい!」

「いいから、いいから。」

「なにが、いいからなんだ?」

「お楽しみは、これからってこと。」

「・・・は?」

「あれ?さっき言ったのに、これだけだと思ってたわけ?

甘いよー。」

いっそのこと清々しい満面の笑みで言われて、

岩城はその顔を、一瞬絶句して見つめた。

「お前が、これだけで済むとは思ってない。」

溜息交じりに答えると、香藤は笑いながら寝室へ向かった。






寝室に入るなり、香藤は岩城をベッドの上に運んだ。

特にだるいわけでもなかったが、岩城は自分では動かず、

香藤が自分の身体の下からブランケットを引っ張り出し、

床へ落とすのを黙って見ていた。

シーツの上に横たわり、枕へ頭を乗せると、

香藤がベッドの上に乗り上げてきた。

「・・・嬉しそうだな、お前。」

「へ?」

きょとんとした顔で香藤は岩城を見返し、

幾分か不機嫌な顔をする岩城に、くすっと笑った。

「そりゃさぁ、いつもはニキがいるから、一応は押さえてるんだよ?」

「あれでか?」

「うん、あれで。」

白い歯を見せて笑うと、

香藤はゆっくりと岩城の上に身体をずらした。

「今日は、気にしなくていいもんね。」

はー、と深い溜息をつくと、岩城は香藤の背に腕を回した。

「えー、やなの?」

「嫌だとは言ってない。」

くすくすと笑いながら、香藤は岩城の項に顔を埋め、

首筋に添って唇を這わせた。

「・・・ん・・・」

息を漏らす岩城を見て、香藤はゆらり、と腰を擦り付けた。

「じゃ、なに?」

「・・・ちょっと、呆れたのと、」

言った途端に、む、と口を尖らせる香藤に、

岩城は笑って言葉を続けた。

「一日ベッドから出られないのは、

何時ぐらいぶりかと思っただけだ。」

「いつだろね?ニキが来てから、ずっとないよ。」

「明日、お前がニキを迎えに行けよ?」

「うん。」

「たぶん、俺には無理だからな。」

頷いて唇を塞ぎ、迎える岩城の舌を絡め取って、

香藤はじっくりと彼の咥内を弄った。




「・・・あぅん・・・んんっ・・・」

岩城の後孔に沈めた指を出し入れさせながら、

香藤は舌先で目の前の乳首を転がした。

がっしりと彼の腰を抱き寄せ、

火照る肌に唇を押し当て、痕を付けた。

「・・・ふっ・・・んぅっ・・・」

腰の奥から湧き上がる疼きを隠そうともせず、

岩城は抱えられながら身体を捩った。

「香藤ォ・・・もっ・・・」

「だめそう?」

「・・・んぁっ・・・」

柔襞を指で捏ねられて、岩城が顎を跳ね上げた。

荒い息をついたまま、見上げる岩城の下唇をねっとりと喰んで、

香藤は指を引きぬいた。

「ああ・・・んっ・・・」

岩城の両足の間に身体を入れ、

膝裏を掴んだ香藤の手から、するりと彼の両足が抜けた。

え、と顔を上げた香藤は、

その脚が目の前で大きく拡げられるのを見て、

顔を綻ばせた。

岩城の腕が、香藤の視界に現れ、下半身へ延びた。

その目の前で、岩城の指が後孔に触れ、するり、と撫でた。

「早く来い・・・。」

「うん。」

にっこりと微笑んで、香藤は岩城が拡げた両足の間に入り込んだ。

腰を掴んで、少し上げさせると、ペニスを後孔に押し当てた。

「・・・ふっ・・・うんっ・・・」

すでに一度受け入れていたそこは、

這入ってきた香藤を柔軟に受け入れ、

巻きこむように、柔襞がうねった。

「・・・あぁ・・・くっ・・・」

押し広げられる後孔の疼きに、岩城が仰け反った。

満足気に細められる瞳に、香藤が嬉しげに笑った。

「気持ちいい?」

「ああ・・・」

溜息で頷いて、岩城は香藤の背に腕を伸ばした。

香藤の腕が腰に回ると、岩城の両脚が香藤に巻きついた。

強請るように揺すられる岩城の腰に、

香藤は項に顔を埋めてくすくすと笑った。

「・・・んふっ」

ペニスを根元まで押し込むと、岩城の唇から熱い息が洩れた。

濡れた唇を貪りながら、香藤は腰を引いた。

「はっ・・・んぅっ・・・」





「よいしょ、」

掛け声のように口にだして、

香藤は中に入ったまま岩城の腰を抱え上げた。

背から外れた岩城の手が、とっさにシーツを握り締めた。

「・・・はっ・・・も、もォ・・・・」

「だーめ。」

そう言って、香藤は両手で掴んだ岩城の腰を抱えなおすと、

荒い息で見返してくる岩城に、口角を上げた。

「まだまだ、これから。」

「ばっ・・・殺す気か?」

掠れかけた声に、返事をせず、くすくすと笑いながら、

香藤は腰を揺すった。

「・・・あぁっ・・・んぁっ・・・」

柔襞を擦るように腰を引き、ぎりぎりまで引き出すと、

勢いを付けて奥まで捻じ込んだ。

「・・・うああっ」

擦り上げられるごとに、湧き上がる快感に翻弄されて、

岩城は夢中で腰を振った。

「いい?」

「・・・んっんんっ・・・」

問いかけに、忙しなく頷く岩城を、香藤は嬉しげに見つめた。

岩城の声が高くなるに連れて、

きつくなる締め付けに少し眉を寄せながら、香藤は奥を抉った。

「ひィっ・・・んあっ・・・」

息を継ぐのも困難なほどの突き上げに、

岩城は香藤にしがみ付いた。

「・・・あっあぁっ・・・いいっ・・・」

背に縋った岩城が、爪を立てるのも構わず、

香藤は岩城の後孔を掻き回した。

「もうっ・・・んあぁっ・・・い、くっ・・・」

ベッドの軋む音と、荒い息使いと、喘ぎ声の篭る寝室に、

岩城の掠れた悲鳴が響いた。

「・・・最高だよねぇ・・・」

蕩けそうな声で、香藤が囁いた。

岩城の中から出た香藤は、茫洋と視線を彷徨わせて、

肩で息をしている岩城を抱え込んで唇を重ねた。

「・・・ん・・・」

舌先で唇を舐めると、岩城の表情が、ふわりと綻んだ。

ほとんど無意識に香藤の舌を追うように、

唇が開き、岩城の舌が覗いた。

それを、香藤は喰らうように、捉えた。

行った余韻がまだ抜けきらない岩城の後孔に、指が潜り込んだ。

途端に走る疼きに、岩城は声を上げた。

「やめろって。」

「なんで?」

「いい加減にしろ。もう無理だって・・・。」

「って言っても、ここは嫌がってないけど?」

香藤の言葉に、岩城は苦笑を浮かべた。

「・・・どう?」

中を指で擦りながら、香藤が笑った。

「まったく・・・んぅ・・・」

前立腺を軽く押し上げられて、岩城が息を漏らした。

それを見て、香藤はにやり、と口元を上げた。

「・・・スケベ。」

「お前には負ける。」

声を上げて笑う香藤を見上げて、岩城は力を抜いた。

指を抜くと、香藤は岩城の身体に手を掛けひっくり返した。

「うわっ・・・」

咄嗟に枕を掴んだ岩城は、

文句を言おうと顔を捻って見上げようとした。

「はーい、じっとしてね。」

香藤の声が聞こえ、後孔に舌が潜り込んで、

岩城は喉を詰まらせた。

「・・・んくっ・・・」

四つん這いになった岩城の腿を、雫が伝い落ち、

その感覚に岩城の身体が揺れた。

後孔を舐めながら、手を伸ばして岩城のペニスを捕え、

それを扱きはじめると、その揺れが震えに変った。

「・・・ああぁっ・・・んっ・・・」

悶える背を眺めながら、

香藤は岩城の後孔が熱く蕩けるのを感じて舌を抜いた。

「かとおッ・・・早くっ・・・」

声を掛ける前に、岩城が切羽詰ったように上げた声に、

香藤はにっこりと笑って岩城の腰を掴んだ。

「行くよ。」

天を向いていた自分のペニスを、後孔に合わせると、

香藤は入口を先端で擦った。

「あふっ・・・」

それだけで、声を漏らす岩城に、嬉しげに尻を揉み込んだ。

「なに、して・・・」

「え?焦らしプレイ?」

笑う香藤を、岩城はむっと睨んだ。

「そんなもの、いらん。」

香藤の目の前に、岩城の指が現れ、

入れかけた後孔にそれが触れた。

「入れる気がないんなら、どけ。」

「じょ、冗談!」

壮絶な流し目を呉れられて、

香藤は慌てて岩城の腰を抱え直した。

「行くよ。」

「・・・んふっ・・・あぁ・・・」

挿いっていくにつれて反りあがっていく岩城の、

白い背を眺めながら、香藤は嘆息をついた。

「たまんない・・・。」

きっちりと奥まで挿れきって、香藤はそこで腰を捻って奥をついた。

「・・・ふあぁっ・・・」

ゆっくりと腰を引いていくと、岩城の中が纏わりつき、

その気持ち良さに香藤は歯を食い縛った。

見下ろした後孔から、紅色の柔襞が覗き、

香藤はごくりと喉を鳴らして岩城の腰を両手で掴んだ。

ふっ、と息を吐くと、香藤は勢いを付けて、中へ押し込んだ。

「ああぁっ・・・ひぅっ・・・」

香藤が動き出すと、そのリズムにあわせるように、

岩城の喘ぎ声が上がった。




「・・・ひぃぁ・・・あふぅっ・・・」

枕を抱き締めて、喘ぐ岩城の後孔を、

香藤は容赦もなく抉っていた。

ペニスが出入りする度に、後孔から音を立てて、

香藤の精が溢れ、腿を伝わってシーツに零れた。

岩城は、与えられるきつ過ぎる快感に吹っ飛んで、

ただ声を上げるだけになっていた。

香藤はそれを見下ろしながら、熱い息を吐いた。

「えっろ・・・」

「・・・あっあッ・・・んぅっ・・・あァっ・・・」

無意識に見返り、見つめてくる岩城の瞳に、香藤は喉を鳴らした。

「岩城さんて、飛ぶととんでもないよね。」

力強く奥を突くと、岩城のペニスが、ぶるりと震え、背が揺れた。

「ひぃんっ・・・」

それを見て、香藤は乾いた唇を一舐めした。

「今度は、俺ね。」

そう呟いた香藤に、聞こえていたのか、

岩城の首が頷くように動いた。

香藤は、その背に覆い被さると、

顔を横にむけた岩城の頬に、唇を押し当てた。

「可愛い、岩城さん。」

その声に、岩城の瞼が薄っすらと開き、

香藤はもう一度頬にキスをすると、岩城の舌が、チロリと覗いた。

それに誘われるように、香藤は岩城の唇を舐めた。

塞がれた岩城の唇から、熱い息が洩れ、

香藤はじっくりとその咥内を嬲ってから、身体を起した。

シーツに膝をつき直すと、岩城が腰を擦り付け、

くすくすと声を上げて、香藤は笑った。

「夜はこれからってね。」








     続く




     弓




   2009年6月14日
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