Much Ado About Nothing 4








「あぅっんっ・・・んぅ・・・」

大きく開いた両脚を抱えられ、後孔を舐られて、

上げかけた声を押さえた岩城に、

香藤が股間に顔を埋めたまま口を開いた。

「声、我慢しなくていいよ?」

「そっ・・・そんなわけにいくかっ・・・。

聞こえたらどうするっ・・・」

「聞こえないって。

ニキの部屋は二階だよ?」

「・・・あぁっ・・・」

差し込まれた舌に、岩城は耐えきれずに声を洩らした。

「欲しいって言ったくせに。」

「それとこれとは別だっ・・・」

「声、我慢出来るならいいけど?」

笑いながら香藤は、後孔に指を挿れた。

くい、と指先を曲げて前立腺を探ると、岩城の喉が引き攣った。

「・・・うぁあっ・・・」

身体を震わせて喘ぐ岩城を、香藤は蕩けそうな顔で見つめた。

そこを撫で摩り、

小刻みに指先で弾くようにすると、岩城の声が高く跳ねた。

「・・・はんっ・・・んあっぁっ・・・」

「ほら、やっぱり我慢なんて出来ないじゃん。」

嬉しげに言いながら、

香藤はすっぽりと岩城のペニスを口に含み、

それを丁寧に愛撫しはじめた。

香藤の髪に突っ込まれた岩城の両手の指が、

与えられる快感に酔ったように、彼の髪をくしゃくしゃにした。

「・・・あぁっ・・・もっ・・・もおっ・・・」

ペニスに加えられる刺激に、後孔が疼き出し、

耐えられなくなった岩城が声を上げた。

香藤の指を飲み込んだそこが、

岩城の身体の火照りをはっきりと示していた。

熱く解け、痛いほど指を締めつけて蠢く後孔から指を引き抜くと、

香藤は袋からペニスの先端までを一気に舐め上げた。

びくん、と岩城の身体が一度跳ねた。

身体を起して、顔を寄せてきた香藤の唇を岩城が啄ばんだ。

「早く・・・。」

「うん。」

にっこりと笑って、香藤は岩城の両脚を抱え、

後孔にペニスを当てた。

熱い塊に押し広げられる柔襞がうねり、

疼きが快感に変わって背筋を駆け上がった。

「・・・うぁっ・・・」

伸び上がるように仰け反り、

岩城は腰を固定している香藤の腕を掴んだ。

「・・・ふっ・・・うんっ・・・」

全部を入れきって、香藤が熱い溜息をついた。

岩城が、薄っすらと目を開いて香藤を見上げた。

目元に熱の浮かんだその顔に、香藤が呻いた。

「色っぽすぎだよ、岩城さん。堪んないよ。」

そう言いながら、香藤は小刻みに腰を揺らした。

「・・・はぅっ・・・んっ・・・」

軽く喘ぎを洩らして、岩城は両腕を香藤に向かって延ばした。

ゆっくりと香藤が重なり、

その肩に両腕を絡めて、岩城は彼を引き寄せた。

「動くよ?」

耳元で囁く香藤に頷いて、岩城が息を吐いた。

「・・・くっ・・・」

柔襞が引き摺られ、

そこから走る息詰まるような快感に、岩城は仰け反った。

「・・・んぁっ・・・あぁっ・・・」

叩き付ける香藤に、戦慄く唇から、岩城の絶え間ない喘ぎが零れた。

大きくM字に開いた両脚が、

香藤を励ますように彼の腰に絡みつき、

突き上げに合わせ、腿を擦るように動いた。

「・・・ふっうんっ・・・あっあぁっ・・・」

白い肌が見る見るうちに染まり、じっとりと汗が浮かんだ。

引き締まった身体が、香藤の下で跳ねるように波をうった。

香藤が腰を打ちつけながら、

ぷっくりと立ち上がった乳首に手をのばし、

それを親指で押しつぶすように捏ねた。

「・・・やぁっ・・・あぁんんっ・・・」

首を振る岩城に、香藤はくすりと笑った。

「なにが、やなのさ?」

荒い息遣いで岩城は香藤を見上げ、

言葉にならずにその香藤の手を握った。

「こっちがいいわけ?」

そう言いながら、香藤は腰を回し、ペニスで壁を擦りあげた。

「・・・ひぁあっ・・・」

目尻を下げてそれを眺め、

香藤はことさらゆっくりと腰を動かし、

先端で岩城の柔襞を掻き回した。

「・・・はぅんんっ・・・」

シーツから岩城の背が浮き、跳ね上がった顎先にキスをして、

香藤は岩城の腰を両腕で抱え直した。

「凄いね、岩城さんの中。」

見上げて視線で問う岩城の唇を舐めながら、

香藤は腰をグラインドさせた。

「・・・ふぁあっ・・・」

「巻き付いてくるよ。熱っついし。」

蠢く柔襞を引き摺るようにペニスを引き出しながら、

香藤は岩城を見つめてにんまりと笑った。

「敏感になったよね、岩城さん。」

「だっ・・・誰のせいだっ・・・」

飛びそうになる意識を堪えて、岩城が答えると、

香藤は声を上げて笑った。

「そりゃあ、俺だよね。」

ペロリ、と乾いた唇を潤して、香藤は岩城の奥へと腰を進めた。

それにつれて上がっていく岩城の顎先を見ながら、

香藤は嬉しげに頬を緩ませた。

「・・・んんっ・・・あぁ・・・」

最奥まで満ちると、香藤は岩城と胸を合わせた。

腹に挟まれた岩城のペニスが、

今にも弾けそうなくらいに熱く脈打っていた。

それを押しつぶすようにしながら、香藤は岩城の唇を喰んだ。

舌を吸い上げ、咥内を舐め、音を立てて貪りあった。

香藤が唇を離すと、閉じた瞳を開いて、岩城は彼を見つめた。

その濡れた瞳に浮かぶ欲情に、香藤のペニスが反応した。

どくん、と中で大きくなるそれに、岩城が眉を顰めて笑った。

「お前、きつすぎだ・・・」

「岩城さんが、えろいからだよ。」

額をすり付けて、熱の篭った瞳で見つめあいながら、香藤が動き出した。

「いいよ、岩城さん、凄く・・・」

「んんっ・・・香、藤っ・・・」

香藤の肩に両手をかけて、岩城が仰け反った。

突き上げた拍子に岩城のペニスが弾けて、二人の腹を濡らした。

「・・・ああっ・・・」

それを切欠にして、湧き上がるように襲ってきた快感に、

岩城の声が高く震えた。

「・・・いいッ・・・香藤っ・・・もっとッ・・・」

しがみ付いてくる岩城を抱えて、香藤は満足気に微笑んだ。

「その台詞、いつ聞いても最高だよ。」

香藤の言葉は耳には入らず、

掻き回される後孔に岩城は嬌声を上げた。

「んぁぁっ・・・あふっ・・・」

擦られる柔襞から身体を突き抜ける快感に、岩城の思考が止まった。

身悶え、腰を振り、身体を摺り付けてくる岩城の後孔を、

香藤は縦横にくまなく抉った。

「・・・いあっ・・・あぁっ・・・ひっィっ・・・」

「堪んない・・・気持ち良すぎ・・・」

絶え間ない快感に喉を引き攣らせ、

岩城の声が甲高く変わるころ、

漸く香藤は自分を追い上げ始めた。

ベッドに膝をつき、香藤はのたうつ岩城の腰を両手で支えると、

強く奥へ叩きつけた。

「・・・くっ・・・」

「うあぁっ・・・ぁあっ・・・」

首を左右に振り、閉じることのない岩城の唇から声が上がる。

前立腺を容赦なく突かれ、悲鳴をあげて岩城の身体が反り返った。

紅色に染まった岩城の身体が、痙攣した。

それを見て、香藤は収縮する柔襞に、

最後の突き上げを繰り返し、岩城の中に放った。

「いくらなんでも、ニキが起きちゃうね。」

香藤は苦笑しながら、

長く尾を引く声を洩らす岩城の口を、片手でそっと塞いだ。




「ごめん、大丈夫?」

「・・・ん・・・」

少しの間、飛ばしていた意識が戻った岩城の顔を、香藤は覗きこんだ。

肩で息をついて岩城は頷き、香藤を見上げて小さく首を振った。

「どっちさ?」

その仕草に香藤は笑いながら、岩城の肌を撫でた。

「あぁ・・・死ぬかと思った・・・」

ぽつり、と息のように呟いた岩城に、香藤は吹き出した。

「岩城さんが欲しいって言ったんじゃない?」

「・・・お前もだろう。」

「そりゃね。」

汗の浮かんだ、まだ火照ったままの岩城の頬にキスをして、

香藤は彼を抱きこんだ。

「岩城さんでしか、勃たないもん。」

「嘘つけ。」

「ほんとだって。今は、岩城さんだけだし。」

「今は、ね・・・。」

そう言って笑う岩城に、香藤が口を尖らせた。

「だってさ・・・。」

「わかってるよ。」

岩城が笑いながら香藤の首に腕を絡めた。

「・・・明日、マージョリーに会ってくる。ニキをつれて。」

「ああ・・・校長先生ね。アポ、取ったんだ?」

「うん。通う前に、説明しておいたほうがいだろう。

すぐ、クリスマスだしな。」

「そうだね。」

「・・・起きたかな、ニキ・・・」

「さあ?」

香藤が肩を竦めながら、岩城の身体に毛布をかけた。

ベッドから降りる香藤を目で追って、岩城は大きく息を吐いた。

「待っててね、後始末、したげるから。寝ちゃってもいいよ。」

「・・・ああ。」

戻ってきた香藤は、静かな寝息を立てる岩城をしばらく眺めていた。

綺麗に身体を拭い、後孔の始末をすると、そっと彼の隣へ滑りこんだ。

抱え込んで、岩城の頭を左肩に乗せると、

香藤はゆっくりとその身体を撫で、額にキスをした。

「おやすみ。いい夢をね。」

「・・・ん・・・」

返事のように洩れた岩城の息に、香藤はくすりと笑った。







「・・・え?」

申し訳なさそうに、マージョリーは岩城を見つめた。

「あなたのこと、いい人だと思うし、

友人としてはこんなことを言うのは辛いんだけど。」

マージョリーは、ニキに視線を向けて、微笑んだ。

翌日、岩城はこの村の小学校長を務めているマージョリーの自宅を、

ニキと共に訪れた。

リビングでテーブルを挟んで座り、

岩城がニキを紹介すると、

彼女は、

「とっくに彼のことは知ってるわ。この村の住人なら、当然ね。」

そう言って笑った。

そして、岩城の説明に、マージョリーは岩城に視線を戻すと、

小さく溜息をついた。

「でもね、キョウスケ、あなたには正確に言うと、

法律的な保護者としての権利がないのよ。

ヨウジのパートナーだけど、子供とは他人だから。」

「それは・・・。」

「校長としては、受け入れるのには問題があるの。

通常、こういう場合、犯罪歴を確認したりするのよ。」

「は・・・。」

苦笑を浮かべて、岩城は首を振った。

「いいよ、調べてもらって。」

「あり得ないでしょうけど、あなたには。」

「ないよ。」

「そうね。」

黙りこんだ岩城を、ニキが心配そうに見上げた。

「きょうすけ、ぼく、がっこう、いけるの?」

「学校には通えるわよ。

ただし、父親のヨウジが送り迎えするなら。」

マージョリーの返事に、く、と唇を噛んで、

岩城はニキの手をぎゅっと握った。

じっと考え込む岩城を、マージョリーは黙って見つめていた。

「法律的な根拠、が必要なんだね?」

「そうね。この学校に通ってる子供達の親は、

あなたのこと知っているけど、それでも嫌がる親がいるかもしれない。

いないかもしれない。

でも、それがあれば、誰も文句は言わないでしょう。」

「・・・わかった。」

眉を顰めたまま、岩城はマージョリーを見返した。

「悪く思わないでね、キョウスケ。仕方ないのよ、これは・・・。」

「ああ、わかってるよ。」

岩城は蒼白になった顔のまま、頷いた。

握っていたニキの手を、軽く叩いて、岩城は立ち上がった。

「帰ろうか、ニキ。」




岩城は通りに出ると、ニキと手を繋いで、歩き始めた。

ふと、視線を彼にに向けると、見上げていたニキと目が合った。

「大丈夫だよ、ニキ。学校には通えるからね。」

「ほんと?」

「ああ、本当だ。」

そう答えると、ニキが目を輝かせて笑った。

それを見て、岩城は大きく息を吐くと、一つ頷いた。

「ニキ、買いたいものがあるから、付き合ってくれるか?」

「うん!」








     続く




     弓




   2008年5月4日
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