Much Ado About Nothing 8








「・・・んぁあっ・・・はんっ・・・」

大きく開いた岩城の両腿を肩に担ぐように抱え、

香藤は岩城のペニスを銜えていた。

舌先でカリの後を舐めると、

岩城が上げていた声が引き攣った。

「・・・ひうっ・・・」

岩城が快感に喉を詰まらせ、シーツを握り締めた。

這わせた舌を引き、香藤はそこに軽く歯を立てて擦った。

頬に当たる岩城の腿が、ぶるり、と震えた。

「・・・やっ・・・んくっ・・・」

シーツを掴んでいた岩城の手が、

押し付けるように香藤の髪につっ込まれ、

香藤は岩城のペニスを愛撫しながら、

口元に笑みを浮かべた。

「・・・で、出るっ・・・香藤っ・・・」

「いいよ、出して。」

「・・・んんっ・・・」

岩城が軽く仰け反って、香藤の咥内で弾けた。

溜息のように息を吐き出して、岩城は香藤を見上げた。

ごくり、と動く香藤の喉元を見つめる岩城に、

香藤はにんまりと笑った。

「美味しいよ?」

「馬鹿・・・。」

赤い顔で苦笑する岩城を抱きこむと、

香藤は下肢に手をのばした。

太腿の間に割り込んでくる手を、

岩城は膝を開いて受け入れた。

「なんか、濡れまくってるね。

これならジェル使わなくても大丈夫みたい。」

香藤がそう言って笑い、

そのまま腿を撫でて指が後孔に触れると、

岩城の腰が揺らいだ。

「・・・あっ・・・んぅ・・・」

挿いってくる指に、岩城の喉が鳴った。

顔を背けるようにして、呻く岩城の頬に伝う汗を、

香藤は舌先で舐めた。

「・・・ふんっ・・・んあぁっ・・・」

奥まで挿し入れた指を回し、柔襞を撫で擦り、

熱くなった中を掻き回すようにすると、

岩城が喉を晒して仰け反った。

眦が紅色に染まり、睫を震わせて声を上げる岩城を、

香藤は嬉しげに眺めると身体を起した。

片手で岩城の両足を大きく拡げ、

香藤はその間に座りこんだ。

差し込んだ指をそのままに、

再び怒張していた岩城のペニスを握り、

鈴口に指先を捻じ込むように押し付けた。

じゅん、と先端から先走りが零れる。

「・・・ひぃっ・・・」

びりびりと快感が身体を走り、

甲高い岩城の声が漏れ、

両足の爪先がシーツに押し付けられ、腰が浮いた。

濡れそぼる岩城のペニスを擦り、中を弄り、

香藤は蕩けそうな顔で、乱れる岩城を眺めていた。

「・・・あふっ・・・ひぁっ・・・」

ペロリ、と香藤は岩城のペニスの先端を舐め、

舌を沿わせて根元まで舐めた。

指をいれたまま、香藤は舌先を後孔に差し込んだ。

「あぁぁっ・・・」

腰を捩り、岩城は顔を左右に振りたてた。

「・・・かっ・・・かとぉっ・・・」

両腕で、岩城の腰をがっしりと押さえ込むと、

香藤は後孔を嘗め尽くした。

「・・・んあぁっ・・・はぁっ・・・うぁっ・・・」

「いい声だよねー。」

唇を放して、しみじみと呟く香藤の声に、

岩城は手を延ばして香藤の髪を掴んだ。

「お前なぁっ・・・」

「欲しい?」

下から見上げる香藤の、煌めく瞳と視線がぶつかり、

岩城はごくりと喉を鳴らした。

嬲られた後孔の奥で、瘧のように蠢く疼きに、

岩城は熱い息を吐いた。

「ああ・・・欲しい。」

にっこりと溶け崩れた顔で、香藤は起き上がると、

岩城の両足を脇に抱えた。

肩で息をしながら、岩城は香藤を見上げた。

潤んだ瞳と濡れた唇に、

香藤は少し呆然として岩城を見つめた。

「・・・まったく、もう。」

「なんだ?」

「なんでそうえろい顔するかなっ・・・。」

そう呟いて、香藤はペニスの先端を岩城の後孔に突き込んだ。

「・・・あっ・・・はっ・・・」

充血した柔襞を押し分けるようにして、

香藤が体内へめり込んでくる。

眉を寄せて顔を背けながら、岩城は香藤の腕を掴んだ。

「・・・く・・・あぁ・・・」

奥まで届き切って、香藤が身体を重ねてくると、

岩城はその背に腕を回した。

動いてもいない香藤のペニスを、

締め付けるように彼の後孔が蠢いた。

「きっつ・・・これだけでイッちゃいそうだよ。」

香藤の笑いを含んだ声に、岩城は大きく息を吐くと、

香藤の耳朶に唇を押し当てた。

「冗談じゃないぞ。萎えるなよ。」

「気持ちよすぎるんだよ、岩城さんの中。

それに俺だってやだよ。これからなのにさ。」

そう言って笑うと、香藤は岩城の腰に両腕を絡ませた。

ぞわり、と岩城の身体に震えが走った。

それを合図に、香藤が腰を引き、岩城の中を動き始めた。

「・・・ひっ・・・んんぁっ・・・」






ペニスで上下左右の柔襞を擦りあげ、奥へと押し込む。

引き抜く時にもそれを繰り返し、香藤は岩城を翻弄した。

「・・・うあぁっ・・・あぅっ・・・」

声を上げる合間に、岩城の喉が引き攣ったように鳴る。

それを聞きながら、香藤は岩城の中を動き回った。

「・・・んぁっ・・・あぁっ・・・」

突っ走る快感に、岩城は腰を捻るようにして身悶えた。

その腰を押さえ込んで、

香藤は前立腺を突き上げるようにペニスを捻じ込んだ。

「・・・ひっあぁッ・・・」

張り詰めていた岩城のペニスが弾け、

悲鳴を上げて仰け反り、

香藤の背中に回っていた手に力が入った。

「・・・いってっ」

立てられた爪に思わず上げた香藤の声は、

岩城の耳には届いていないようで、

うねる身体を抱き締めて香藤はくすりと笑って、

柔襞を擦りあげた。

「・・・ふあぁっ・・・うんッ・・・」

濡れた唇を塞ぐと、岩城が飢えたように舌を差し出した。

それを貪り、香藤は動きながら岩城の顔を見つめた。

ニキに父とも母ともいえる表情を向ける彼とは、

同一人物とも思えないほどの、妖艶な淫らなその顔に、

香藤はごくりと喉を鳴らして見入った。

「・・・香藤ォ・・・ッ・・・」

香藤の突き上げに、背がシーツから跳ねるように浮き、

名を呼んでしがみ付いた。

その耳に唇を押し付けて、香藤が囁いた。

「いくよ?」

張り付いた頬が、忙しなく頷いて、

香藤は岩城の方に背中側から手を掛け、その身体を固定した。

「・・・あっ・・・あァッ・・・んぁッ・・・」

岩城の快感を優先させていた香藤が、

自分を追い込むために腰を使う。

酷く擦られているはずだが、

柔襞から湧きあがる疼きに翻弄され、

岩城の両足が固定された腰の代わりに揺れた。

「・・・もっとッ・・・奥っ・・・っひぅッ・・・」

香藤の動きに合わせて揺れていた身体が、

突き上げられた途端に引き攣り、

上げていた声が悲鳴に近い喘ぎに変わった。

「・・・ひぃッ・・・いっ・・・」

仰け反ったまま途切れ途切れの声を洩らす彼を見て、

香藤は岩城がいきかけていることに気付いた。

巻きつく柔襞を抉るように掻き回すと、

岩城が夢中で腰を摺り付け、

香藤の首に腕を回して引き寄せた。

「・・・いぃッ・・・あンぁっ・・・」

歯を食い縛るようにして、

香藤は腰を叩きつけ、岩城の奥で果てた。

頭の中が真っ白になるほど、背筋を駆け上がった快感に、

岩城の身体が硬直した。

「・・・うあぁッ・・・」

縮こまった指先が、シーツを踏み締め、

岩城の背が弓形に反りかえった。




長く響く岩城の声を聞きながら、

香藤は弛緩して行く岩城の身体に重なり、

その肌をゆっくりと撫でた。

「・・・大丈夫?」

「ん・・・。」

ゆるゆると痙攣する岩城の柔襞をペニスで感じながら、

香藤はそっと岩城の額にキスをおとした。

柔襞が引き摺られて、岩城は香藤を抱き込んだ。

「抜くな。」

「あ?」

「いいから。」

香藤は真上から岩城の顔を覗きこんだ。

少し間抜けたその顔に、岩城はくすりと笑った。

「・・・あのさ。」

どくり、と中で香藤が熱を持つのを感じて、

岩城は喉を逸らせて息を吐いた。

ちらりと香藤の顔を見上げる岩城に、

香藤は苦笑を浮かべた。

「無自覚にその顔してるんだよね・・・。」

「どういう意味だ、それは?」

「エロ過ぎなの、まったくもう。」

溜息をついて香藤は腰を揺らした。

「・・・はんっ・・・」

いったばかりの岩城の後孔が、それに応えて疼いた。

ずりずりと香藤はペニスを半分引き出すと、

岩城の後孔がこぽりと音を立てた。

白いものが溢れ出したそこを、

香藤が見下ろして溜息をついた。

「これだけやってても、岩城さんは孕まないんだよねぇ・・・ぃてっ!」

頭をはたかれて、香藤はばつが悪げに頭を掻いた。

「万が一孕んだら、産んでやるよ。」

岩城がそう言ってにんまりと笑った。

香藤は声を上げて笑うと、岩城の腰を抱え直した。

「じゃ、頑張っちゃおうかな。」

香藤はぎりぎりまで引き出したペニスを、

思い切りよく奥まで叩き付けるように押し込んだ。

「・・・んあぁっ・・・ああっ・・・」




香藤が出入りするたびに、

音を立てて中に出された精が溢れ、

膝をついた岩城の腿を伝ってシーツを濡らした。

「・・・もっ・・・もっとっ・・・」

震える背中を見て香藤は岩城の腰を掴んだ。

反り返った香藤のペニスが、岩城の中を掻き回した。

「・・・あぁっ・・・ひいっ・・・」

背中に覆いかぶさり、

香藤は手をのばして岩城の乳首を指で弄った。

「・・・はぅっ・・・」

「気持ちいいでしょ?」

腰を動かしながら、香藤はもう片方の手を、

岩城の股間に潜り込ませ、

はち切れそうな彼のペニスを握りこんだ。

蕩け切った岩城の身体が、

香藤の突き上げと、乳首とペニスへの愛撫に狂喜し、

声が跳ね上がった。

「・・・やぁぁっ・・・」

首を振って悲鳴を上げ、眦から涙が零れ、

香藤の舌がそれを、優しく舐め取った。

「・・・もう・・・かとぉ・・・」

身悶えながら、岩城は夢中で香藤を呼んだ。

「岩城さん、大好き。」

それに答えるように、

香藤は岩城の耳に唇を押し付けて囁いた。

「・・・ん・・・」

揺すられながら、岩城が何度も頷いた。

「・・・んあぁっ・・・あゥんっ・・・」

激しくなった往復に、

岩城が腰を突き出し、背が反り上がった。

上げていた声が、香藤の荒い息遣いにかき消されるくらいの、

小さな啜り泣きに変わった。

香藤が大きな息を吐いて中で果てると、

うめき声を洩らして、岩城は一度大きく仰け反り、

そのあと枕に突っ伏した。




「お前、飛ばしすぎだ。」

肩で息をつきながら、岩城が掠れ切った声を洩らした。

「ごめん。」

香藤が岩城を抱えこみ、彼の額に自分の額をすり付けた。

薄く開いて息を整えようとする岩城の唇を、

啄ばむように吸い、香藤はにっこりと笑った。

「子供がいると、ちょっとやりにくいよね。」

「・・・そう思ってるとは、思えないな。」

岩城が呆れたように答えると、

香藤は声を上げて笑い、

岩城の項の後れ毛をかき上げた。

その手をゆっくりとのばして、

香藤は岩城の肌を慈しむように撫でた。

黙ったまま岩城はそれを受け、

もぞもぞと香藤の肩に頭を乗せた。

「明日、出かけようね。」

「ああ、買い物か・・・。」

「クリスマスだもんね。」

ブランケットを手繰り寄せ、

岩城の肩を覆いながら、香藤が少し肩を竦めた。

「不思議な感じがするよ。」

「なにが?」

「一昨年のクリスマスは、岩城さんとはまだ友人で、

去年のクリスマスは恋人になって。

で、今年はニキがいるんだもん。」

くすくすと笑う岩城を抱き込んで、香藤も笑った。

「人生って、何があるかわかんないね。」

「まったくだな。

俺も、お前と結婚することになるとは、思わなかった。」

「来年もいい年になるといいね。」

微笑んで頷く岩城の鼻先にキスをして、

香藤は肩に頭を乗せなおした岩城の背に腕を回した。

「おやすみ、岩城さん。」








     続く




     弓




   2008年9月14日
本棚へ
BACK NEXT